明荷

明荷（あけに）について

明荷（あけに）は、相撲の世界において十両以上の力士や行司が使用する特別な行李のことを指します。この行李は、力士が本場所や巡業で必要とする様々な日用品を収納するためのものであり、通常は化粧廻し、締め込み、浴衣、および小物や雑品（例：テーピングテープ）などが入っています。興味深いことに、幕下以下の力士が明荷を持っていても使用することはできません。これは、彼らの地位によるもので、明荷は主に関取力士によって使用されます。

明荷の運搬と種類

本場所では、各力士が初日に支度部屋に自分の明荷を運び入れ、千秋楽までそのまま置いておくというルールがあります。通常、一人につき一つの明荷が原則ですが、特別な地位にある横綱の場合、最大で3つの明荷を持ち込むことが認められています。また、地方巡業にも明荷を持ち運び、旅行鞄としての機能も果たしています。

日本の相撲協会においては、化粧廻しは後援会から贈られることが多い一方で、明荷は力士の入門同期生たちが共同でお金を出し合い、十両昇進を果たした力士に贈ることが一般的です。これは、相撲界における友情や協力を象徴する伝統的な習慣となっています。

明荷は、真竹の板を井桁に編み、それを倉庫するように丈夫な和紙で幾重にも張り、漆で塗り固めて作られています。そのため、中身を守る耐久性の高い竹籠ができあがります。

明荷の特徴

明荷の特徴的な点は、外観にあります。蓋には、持主の四股名が朱色で書かれており、その名が一目でわかるようになっています。ただし、側面には3文字分のスペースしかなく、4文字以上の四股名を持つ力士は柔軟な工夫をしなければなりません。例えば、4文字の「稀勢の里」では左下に小さく「の」と記入され、5文字の「千代の富士」では「千代」と「富士」をそれぞれ1文字を小さくして配置する工夫が見られます。このように、明荷の様々なデザインは力士たちの個性を反映しています。

また、関取が改名する際には、新しい四股名を入れた明荷を用意することになります。明荷の大きさは、おおよそ縦45cm、横80cm、高さ30cm、そして重さは約10kgと、力士が持ち運ぶにはちょうど良いサイズとなっています。現在、この明荷は京都市の渡辺商店で製作されています。

明荷の歴史

明荷の歴史は非常に古く、江戸時代中期にはすでに使用されていたという記録があります。以前は、明治時代初期の両國梶之助が初めて明荷を使用したと考えられていましたが、1962年に山形県東田川郡庄内町で、文政年間の幕内力士・越ノ戸濱之助の明荷が発見されたことにより、江戸時代から使用例があったとされています。

文化的な意味

相撲界において、明荷は単に日用品を運ぶためのものではなく、力士たちの経歴や絆を象徴する重要な側面を持っています。また、幕下以下の力士を「ふんどし担ぎ」と揶揄することがありますが、これは彼らが関取の付き人として明荷を運ぶ役目を担うためです。このように、明荷は相撲界における力士の地位や役割、そして伝統を理解するための重要な要素となっています。

そのため、明荷は相撲界の文化や歴史を知る手助けともなります。力士たちが努力し、築かれた絆を感じるための象徴的な存在なのです。

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