星は何でも知っている

楽曲解説

「星は何でも知っている」は、1958年7月に世に送り出された、歌手・平尾昌章（後の平尾昌晃）によるポピュラーソングです。この楽曲は、後に日本を代表する作曲家として活躍する平尾昌晃が、「平尾昌章」名義でロカビリー歌手として活動していた黎明期における代表的なヒット曲の一つとして知られています。

楽曲の概要と時代背景

1950年代後半、日本に上陸したロカビリー音楽は若者たちの熱狂的な支持を集めていました。平尾昌章もまた、このムーヴメントの中心人物として人気を博していました。「星は何でも知っている」は、このロカビリーブームの中で生まれた楽曲であり、そのキャッチーなメロディーと平尾の情感豊かなボーカルが多くのリスナーを惹きつけ、大ヒットとなりました。作詞は水島哲、作曲は津々美洋が手がけています。

レコード媒体と収録曲

発表当時、この楽曲はシングルレコードとして販売されました。媒体としては、当時の主流であったEP盤（品番：EB-108）とSP盤（品番：C-1617）が同時にリリースされています。両媒体でジャケットデザインは共通しており、表面にはそれぞれの品番が併記されていました。

シングルのB面に収められていたのは、「ロック夕やけこやけ」という楽曲です。これは、国民的な童謡「夕焼小焼」を斬新なロックアレンジでカバーしたもので、作詞は中村雨虹、作曲は草川信による原曲に対し、編曲は平尾昌章自身と津々美洋が共同で担当しました。演奏にはオールスターズ・ワゴンが参加し、リリオ・リズム・エアーズがコーラスを務めています。エルヴィス・プレスリーを彷彿とさせる平尾の力強いボーカルと、ロカビリースピリットあふれるバッキングアンサンブルは、当時の平尾昌章がロカビリー歌手として活動していたことを明確に示しています。

ヒットと再発の歴史

「星は何でも知っている」は、発売後、累計で50万枚、あるいは100万枚とも言われる記録的なセールスを達成しました。この成功は、平尾昌章の歌手としての地位を確固たるものにしました。

オリジナルのレコードジャケットでは、タイトルが「星はなんでも知っている」と平仮名表記されていました。しかし、その後の様々なバージョンやメディアでの表記では「星は何んでも知っている」といった異なる表記が見られることもあります。

本楽曲は、一度きりのリリースに留まらず、長年にわたり繰り返し再発売されています。1966年には、オリジナルと同内容ながらジャケットデザインを刷新したシングル盤（品番：EB-108）として再リリースされました。同年には、本楽曲の他に「ミヨチャン」「おもいで」「星の降るよな晩だった」といった代表曲を含むコンパクト盤（品番：SS-184）も発売されています。

さらに、1970年（品番：BS-1141）、1978年（品番：GK-2034）、1984年（品番：K07S-2826）には、B面曲を平尾の別のヒット曲「ミヨちゃん」に差し替えたシングル盤が複数回にわたりリリースされており、本楽曲がいかに長きにわたり需要があったかが伺えます。

また、1976年には、平尾昌晃自身がディスコアレンジでこの曲を再録音し、LPアルバム『disco train』に収録しました。編曲は深町純が担当し、原曲とは異なるダンスミュージックとして新たな魅力を引き出しています。

映画『星は何でも知っている』

「星は何でも知っている」の楽曲の大ヒットを受け、これをモチーフとした同名の歌謡映画が日活によって製作されました。

作品情報

映画『星は何でも知っている』は、1958年8月12日に公開されました。上映時間は49分と、当時のプログラムピクチャーとして制作されています。

スタッフ・キャスト

本作の監督は吉村廉が務め、脚本は小川英が担当しました。原作は小野田勇、企画は茂木了次です。撮影は姫田真佐久、美術は千葉一彦、音楽は河辺公一、録音は古山恒夫、照明は岩木保夫がそれぞれ担当しました。

主演は丘野美子が務め、岡田眞澄、木戸新太郎らが共演しています。特筆すべきは、楽曲の歌手である平尾昌章自身も「平戸昌彦」という役柄で出演している点です。その他、伊藤寿章、菅井一郎、初井言栄、葵真木子、水木京一、日輪マコが出演しており、歌手の田端義夫が特別出演しています。

その他のメディア展開とカバー

この楽曲は、発表から長い年月を経て様々な形で人々に届けられています。

メディアでの使用

1958年の日活映画の主題歌として使用された他、後年にはNHKの連続テレビ小説『てるてる家族』の第35話でも、エルヴィス・プレスリーの「ラヴ・ミー・テンダー」と共に印象的に使用されました。

また、TBSラジオの長寿番組「コサキンDEワァオ!」では、番組内の人気コーナー「CD大作戦」において、本楽曲のセリフ部分がしばしば引用され、若年層にもその存在が知られるきっかけの一つとなりました。テレビ番組「そう言えば あの時このうた」でも、1958年を代表する楽曲として取り上げられています。

主なカバー

発表以降、複数のアーティストによってカバーされています。

望月浩: 1969年にシングル「星はなんでも知っている／恋のズッケロ」のA面曲としてカバーしています。
豊川誕: 1976年リリースのLPアルバム『夜空の道しるべ』に収録されています。

「星は何でも知っている」は、平尾昌章の歌手としての初期キャリアを象徴するヒット曲であるとともに、同名の映画化や度重なる再発、多様なメディアでの使用を通して、日本の音楽史にその名を刻む一曲と言えるでしょう。

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