夕焼小焼

夕焼小焼

「夕焼小焼」（ゆうやけこやけ）は、1919年（大正8年）に中村雨紅によって作詞され、1922年（大正11年）に草川信が作曲した童謡です。1923年に楽譜が出版されて以来、日本で最も広く親しまれている童謡の一つとして知られています。

楽曲解説

この歌は、美しいながらもどこか寂しさを感じさせる田舎の夕暮れの風景を、叙情的に歌い上げています。ゆったりとした、歌いやすいヨナ抜き音階のメロディーが、歌詞の情感を一層引き立てています。この歌は、日本の代表的な抒情歌として、長く愛され続けています。

関東大震災により、この歌に関連する資料の多くが焼失しましたが、奇跡的に残った13部の楽譜がもととなり、広く世間に知られるようになりました。

作詞者の中村雨紅は、数多くの作品を残していますが、その中でも「夕焼小焼」は最も広く知られています。作曲者の草川信は、童謡運動の先駆者として活躍した人物であり、後に音羽ゆりかご会を創設し、川田正子・孝子姉妹を育てた海沼實の師でもあります。草川信の代表的な作品には、「揺籃のうた」、「汽車ポッポ」、「どこかで春が」、「緑のそよ風」などがあります。

年表

1989年（平成元年）：NHKの全国アンケート「あなたが選ぶ日本のうた・ふるさとのうた」で第3位を獲得。
2003年（平成15年）：NPO日本童謡の会による「好きな童謡」アンケートで第5位に選出。
2007年（平成19年）：日本の歌百選に選ばれる。

夕焼小焼と八王子市

「夕焼小焼」の歌の情景は、中村雨紅の故郷である東京都八王子市恩方地区がモデルとなっています。「夕やけ小やけふれあいの里」の前には「夕焼小焼」バス停があり、路線バスが運行しています。また、以前は「夕やけ小やけ号」というボンネットバスも運行していました。

JR八王子駅では、2005年12月25日から、各番線でアレンジは異なりますが、すべて「夕焼小焼」が発車メロディとして使用されています。駅のコンコースには、この歌をイメージした壁画と歌碑が設置されています。さらに、八王子市の防災行政無線では、夕方の時報曲としてこの歌が使われています。

記念碑と記念塔

中村雨紅が教師をしていた荒川区の小学校には、「夕焼け小焼けの記念碑」と「夕焼け小焼けの記念塔」がそれぞれ建立されています。また、草川信が音楽教師をしていた渋谷区の小学校には、「夕やけこやけの碑」が建てられています。

夕方の時報

「夕焼小焼」は、八王子市だけでなく、日本各地の市町村防災行政無線で夕方の時報曲として利用されています。また、公共施設や自治会の放送設備など、防災行政無線以外の場所でも時報曲として流れることがあります。各社が放送用に編曲した音源を使用しており、TOA、西菱電機、東京テレメッセージなど、多くのメーカーが独自のアレンジを施した「夕焼け小焼け」を提供しています。一部の地域では、メーカーの音源ではなく、オリジナルのアレンジで放送されています。

その他のエピソード

戦時中、学童疎開していた児童たちの間で、「夕焼小焼」の替え歌が流行しました。この替え歌は、原曲の歌詞を否定的に変え、戦争によって家を恋しがる子供たちの悲しみを表現したものでした。

また、平尾昌晃は「ロック夕やけ小やけ」として、この歌をロック調にアレンジしてカバーしています。1990年代には、テレビ番組のエンディングで、「夕焼小焼」が他の曲と組み合わせて歌われることもありました。2008年には、著名なアーティストたちが「夕焼小焼」をアカペラで歌い、ライブを締めくくりました。

「夕焼小焼」は、かつて日本の委任統治領であったパラオ諸島にも伝わり、現在でも歓迎の式典で歌われることがあります。

脚注

参考文献

川崎洋『大人のための教科書の歌』いそっぷ社、1998年。
山内喜美子『奇跡の童謡』大空出版、2022年。

関連項目

中村雨紅
恩方村（現：東京都八王子市）
興慶寺 (八王子市)
夕やけ小やけふれあいの里
草川信
日本の歌百選

外部リンク

夕やけ小やけふれあいの里 - 八王子市
夕焼け小焼けの記念碑（第二日暮里小学校） - 荒川区
夕焼け小焼けの記念塔（第三日暮里小学校） - 荒川区

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