春の波涛

『春の波涛』

『春の波涛』（はるのはとう）は、1985年1月から12月まで放送されたNHKの大河ドラマ第23作で、主演は松坂慶子が務めました。この作品は中島丈博が脚本を手掛け、杉本苑子の小説『冥府回廊』と『マダム貞奴』を原作としています。これにより、本作は前年の『山河燃ゆ』に続く「近代大河3部作」の第2作となります。

概要

本作は明治・大正時代を舞台に、日本の女優第一号である川上貞奴を中心とした人々の物語を描いた群像劇です。物語には、貞奴の夫である川上音二郎、福澤諭吉の娘婿で「電力王」とも称される福澤桃介、さらには貞奴の水揚げを手伝った政治家伊藤博文など、さまざまな実在の人物が登場します。

『春の波涛』は、明治生まれの実在の人物を主人公にした最初の大河ドラマであり、昭和まで生きた人物を描いた初の作品でもありますが、主人公の生涯全ては描かれていません。物語は1924年の描写で終わるものの、ナレーションや映像によって貞奴のその後を伝えています。また、このドラマは大正時代を描いた初の大河ドラマでもあります。

著作権問題と再放送

『春の波涛』は、山口玲子に著作権侵害を訴えられ、「春の波涛事件」と呼ばれる著作権裁判が行われました。しかし、最終的にNHKが勝訴し、長らく再放送やDVD化が望まれていました。2007年11月からはホームドラマチャンネルでの放送が始まり、2012年11月からはNHKオンデマンドで総集編の配信が行われ、2017年2月24日には完全版と総集編のDVDが発売されました。

キャスト

主なキャストには、貞役の松坂慶子、夫音二郎役の中村雅俊、伊藤博文役の伊丹十三などが名を連ねています。特に、音二郎は政治家を志していたものの、多くの試練を乗り越え、貞と結婚することになります。福澤桃介役を演じた風間杜夫や、福澤房子役の檀ふみ、芸者役の名取裕子など、多彩なキャストが物語を彩りました。

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本作の人気に伴い、1985年の放送終了後、2017年に発売された完全版DVDでは、当時の映像や演出が再現されています。また、翌年に放送されたNHK連続テレビ小説『はね駒』でも本作の映像が使われた場面があります。

放送と制作

放送は毎週日曜の20時から40分間の枠で行われ、その後再放送も行われました。制作にあたっては多くの専門家が関与し、歴史的な考証や風俗についても細心の注意が払われています。

『春の波涛』は、明治・大正時代の文化や人々のドラマを生き生きと映し出し、視聴者に深い感動を与えた作品として、日本のテレビドラマ史に名を刻んでいます。

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