春一番 (コンサート)

「春一番」は、1971年に大阪で産声を上げた大規模な野外音楽イベントです。当初は福岡風太氏や阿部登氏らが中心となり、大阪の天王寺公園野外音楽堂などを舞台に、ゴールデンウィーク期間中に開催されました。このコンサートの大きな特色は、フォーク、ロック、ジャズといったジャンルの垣根を越え、メジャー/インディーズを問わない多様なアーティストが集結したことにあります。一度の中断期間を経て、現在は「祝春一番」として多くの音楽ファンに親しまれています。

イベントの始まりは、極めて手作りなものでした。運営のための専門組織はなく、大阪・なんば元町にあったコーヒーハウス「ディラン」が、関係者たちの打ち合わせ場所でした。店主の大塚まさじ氏をはじめ、友部正人氏、西岡恭蔵氏ら多くの音楽関係者や詩人たちがここに集まり、福岡風太氏を中心に、和やかな雰囲気の中で企画や準備が進められました。東京の音楽シーンとの交流もあり、はっぴいえんどや岡林信康氏とのつながり、そして山下洋輔氏のマネージャーを務めていた阿部登氏が大阪に戻ってきたことも、企画推進に重要な役割を果たしました。若き日のいとうたかお氏も、第1回にスタッフとして参加し、後に大阪へ移住するなど、このイベントは多くの人々を引き寄せました。

全国的なフォークジャンボリーの熱狂を受け継ぐ形で開催された1972年の第2回「春一番」は、初回を上回る盛況となりました。この時期から、コンサートのライブ音源を収録したレコードが制作・リリースされるようになり、「春一番」の存在は全国的な知名度を獲得していきます。

毎年開催を続ける中で、出演者やスタッフからプロの音楽家や音楽業界関係者として活動を始める人々が次々と生まれました。コンサートを支えた裏方スタッフも、マネージャー、PAエンジニア、照明技師など、音楽関連の仕事を本業とする者が増加しました。関わる人々のプロ化とそれに伴う多忙化など、様々な事情が考慮され、1979年をもって「春一番」は一時的な中断期間に入ることとなりました。

16年のブランクを経て、「春一番」が復活したのは1995年でした。この年は阪神・淡路大震災が発生した年でもあり、その記憶が新しい中での再開となりました。会場を大阪城野外音楽堂に移し、「春一番'95」として5月4日、5日の2日間開催されました。

翌1996年からは、イベント名が「祝春一番」と改称され、会場も服部緑地野外音楽堂へと変更されました。同時に、開催日程も従来の2日間から3日間に拡大されました。その後、2004年以降は4日間、2009年以降は5日間と、開催期間は徐々に長期化していきました。2006年からはイベント名が再び「祝春一番」と明示され、現在まで続いています。

長年イベントを支えた阿部登氏が2010年に逝去し、翌2011年には東日本大震災と原発事故が発生しました。奇しくも40周年記念となった「祝春一番2011」は、福岡風太氏によって「あまりにもデカすぎる追悼コンサート」であり、同時に「世界中から原子力発電所は無くならなあきません」という反原発のメッセージや、被災地へのエールとして「自由に『心（キモチ）』を発信する」場として位置づけられました。福岡氏は、盟友である高田渡氏の死がコンサートを続ける大きな理由の一つであると語っており、単なる音楽フェスに留まらない、関わった人々の絆や記憶を大切にする場としての性格も持っています。

「春一番」の精神は、関西以外にも広がっています。1973年には福岡風太氏の許諾を得て、東京の新宿ロフトで「春二番」というライブが開催されました。2000年代にも「春二番」や「東京春一番」といった関連イベントが東京で開催されています。

このコンサートのために、ミュージシャンの西岡恭蔵氏が「春一番」というテーマ曲を作曲しました。

「春一番」の最大の魅力は、その多様な出演者陣にあります。初期には高田渡氏、西岡恭蔵氏、はっぴいえんど、憂歌団など日本のフォーク・ロックシーンを彩る面々が多数出演しました。再開後も押尾コータロー氏、リクオ氏に加え、忌野清志郎氏、ウルフルズ、CHAR氏といったメジャーシーンで活躍するアーティスト、さらには山下洋輔氏やペギー葉山氏といったジャズ界のベテランまで、幅広い顔ぶれが登場しています。このように、ジャンルや世代を超えた出演者が集まることが、「春一番」「祝春一番」の変わらない特徴であり、多くの音楽ファンを引きつけ続けています。

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