昭憲太后杜氏

昭憲太后 (しょうけんたいごう)

昭憲太后（天復2年（902年） - 建隆2年6月2日（961年7月17日））は、後周の武将である趙弘殷の妻であり、北宋の初代皇帝である趙匡胤（太祖）、二代皇帝である趙匡義（太宗）、そして趙廷美らの母です。彼女の姓は杜氏で、諱は不明です。太祖の即位後、皇太后となり、昭憲と諡されました。

生涯

昭憲太后は、定州安喜県（現在の河北省）の出身です。父は杜爽、母は范氏であり、5男3女の兄弟姉妹の最年長として生まれました。成年（通常15歳）に達するとすぐに趙弘殷に嫁ぎました。後周の顕徳年間、趙匡胤が定国軍節度使に任じられると、南陽郡太夫人に封じられました。

陳橋の変の際、趙匡胤が皇帝になったという知らせを受けた時、彼女は「わが子は元々大志があった。今果たせり」と言ったと伝えられています。この言葉は、彼女が息子の才能を早くから見抜いていたことを示唆しています。

趙匡胤が即位すると、昭憲太后は皇太后となりました。趙匡胤や臣下たちが祝いに訪れる中、彼女は喜ぶ様子を見せませんでした。理由を尋ねられると、「子のおかげで尊い位につけたのであって、どうして喜べようか」と答え、さらに「君主であることは難しいと聞いている。万民の上に君臨するのであり、もし上手く政を治められたのなら尊ばれるが、もし失敗したのであれば誰からも求められない。これが私が憂いている理由である」と語ったとされています。この言葉から、彼女が単に地位の向上を喜ぶだけでなく、皇帝としての責任の重さを深く理解していたことが伺えます。

建隆2年（961年）、昭憲太后が病に倒れると、趙匡胤は自らそばを離れずに看病しました。病状が悪化すると、近侍の趙普を呼び、遺命を伝えました。彼女は趙匡胤に「どうして汝は天下を得たと思うか」と尋ね、趙匡胤が「私が天下を得られたのは、先祖と母上の積み重ねのおかげでございます」と答えると、「違う。ただ世宗が幼君しか残さなかったからだ。もしも周室に年長のものがいたら、天下を得られただろうか。もしもずっと皇帝位を伝えたければ、そなたの弟（趙光義）に継がせるべきだ。年長の者を立ててこそ宋の社稷は安泰であろう」と述べました。これを聞いた趙匡胤は涙を流して頭を下げ、「母上のお教えに従います」と答え、趙普にこの言葉を記録させ、誓約書を書かせました。そして、自身の財産を親密だった宮人に与えたと伝えられています。同年6月、60歳で崩御しました。

昭憲太后の遺言は、北宋の皇位継承に大きな影響を与えました。彼女の死後、趙匡胤の弟である趙匡義（太宗）が皇帝を継承しましたが、これは彼女の遺言が大きく影響していると言えるでしょう。彼女の賢明な判断と、国を思う強い気持ちは、後世にまで語り継がれています。

参考文献

『宋史』 列伝第一 后妃上

関連項目

千載不決の議 - 昭憲太后の遺言が、太宗により自身の即位に都合良く利用されたのではないかという疑惑があります。

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