是円

是円について

是円（ぜえん）、本名中原章賢（なかはらののりかた）は、鎌倉時代末期から南北朝時代初期にかけて著名な法学者です。彼は室町幕府の基本法『建武式目』を足利尊氏に勘申した重要な役割を果たしました。

家系とその背景

是円は、中原章継の息子として生まれ、著名な学者の家系で育ちました。中原氏は10世紀にさかのぼる明経博士の末裔で、家族は明経道（儒学）と明法道（法学）の二つの系譜を持ちます。父の章継は明法道の流れを汲んでおり、明法博士にまで昇進したとされています。彼の兄、章任は法学書『金玉掌中抄』の著者であり、弟の真恵も『建武式目』の勘申者の一人です。

是円の生年ははっきりしていませんが、弟の真恵が1346年に亡くなったことから、少なくとも1282年以前に生まれたと考えられています。

学問と業績

正応4年（1291年）に衛門少志に任命され、同年に右衛門尉に昇進します。その後、彼は仏教に帰依し、是円房道昭の名を名乗るようになります。建武の新政（1333–1336年）では雑訴決断所の一員として活動し、法的立場から朝廷に参与しました。彼は後醍醐天皇と足利尊氏の戦いにおいて、足利方に付く一方、還俗せずに法体のまま活動しました。

特に、建武3年に尊氏から諮問を受けて、『建武式目』を勘申したことが彼の業績として知られています。この基本法は形式上「諮問への答申書」として提出されましたが、実質的には是円と真恵が中心となって作成されたものです。

法学者としての示唆

是円は公家法に精通していただけでなく、武家法についても深い理解を持っていました。彼は『御成敗式目』に対する注釈書『是円抄』を著しましたが、残念ながら散逸してしまっています。彼の学問的背景を考慮すると、足利直義の政治理念に強く影響を受けていた可能性も指摘されています。

かつて彼が二階堂氏に属するという説が流布されていましたが、これは誤りであることが後の研究により判明しています。彼の家系が、中原氏という朝廷から重用される明法道の系統であることが明らかになったことは、『建武式目』の理解において重要な転換点となりました。

生涯と影響

没年についてもはっきりしないものの、1348年には存命であったことが文献に記されています。彼の思想と業績は、その後の法学の進展に大きな影響を与えました。また、彼の著作は散逸したものの、彼が築いた法的枠組みは後の時代に引き継がれました。

是円はその優れた法的見識と実務における貢献によって、歴史に強い足跡を残した重要な法学者であり、彼の業績は、一世代を超えて日本の法体系に影響を与え続けています。

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