時永浦三

時永浦三：朝鮮総督府から県知事へ、激動の時代を生きた官僚

時永浦三（ときながうらぞう）は、1884年（明治17年）に広島県で生まれ、1929年（昭和4年）に44歳で亡くなった官僚です。東京帝国大学を卒業後、朝鮮総督府に勤務し、その後、県知事を歴任しました。

生い立ちと学歴

時永浦三は、広島県甲奴郡上下村（現在の府中市）で、時永清吉の三男として誕生しました。第一高等学校を経て、1909年7月に東京帝国大学法科大学政治学科を卒業。さらに大学院に進学し、同年11月には文官高等試験行政科試験に合格しました。このエリートコースは、当時の官僚への道としては王道でした。

朝鮮総督府での活躍

1910年5月、時永は統監府属として朝鮮に渡り、官僚としてのキャリアをスタートさせます。同年10月には朝鮮総督府取調局属となり、以後、同局事務官、道事務官（平安南道、京畿道在勤）、総務局総務課長、参事官、内務部第二課長、済世院庶務課長事務嘱託、警務官、警視、警務総監部保安課長、高等警察課長事務取扱、事務官、参事官などを歴任。1922年1月には、朝鮮総督府監察官に就任しました。朝鮮半島における行政の中枢で、重要な役割を果たしました。

内務官僚、そして県知事へ

1922年10月、時永は内務省に転じ、大分県内務部長に就任します。その後、鳥取県内務部長を経て、1924年10月には宮城県内務部長に。1925年9月には、宮崎県知事として県政を担うことになります。宮崎県では、郡制廃止後の対応に尽力しました。1926年9月には、佐賀県知事に転任。ここでは、神埼実業銀行・古賀銀行の休業対策に奔走しました。しかし、1927年5月17日、時永は病のため休職を余儀なくされます。

その後と突然の死

休職後、大阪市助役に推挙されますが、内定していた朝鮮京畿道知事の職を優先し、これを辞退。療養中に、44歳という若さで亡くなりました。その死は、今後の活躍を期待されていた時永の早すぎる終焉として、多くの人に惜しまれました。

著作と親族

時永は、『愛蘭問題』（1921年）や『大分県の一年有半記念講演集』（1924年）などの著作も残しています。また、妻の美子は子爵品川弥一の長女であり、甥には広島銀行頭取の時永一男、又甥にはアニメーターの時永宜幸がいます。幅広い分野で活躍する親族を持つ人物でした。

時永浦三の功績

時永浦三は、朝鮮総督府における行政官として、また地方行政の責任者としての県知事として、多岐にわたる分野でその能力を発揮しました。彼の業績は、激動の時代を駆け抜けた一人の官僚の足跡として、今日に語り継がれています。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
人事興信所編『人事興信録』第7版、1925年。
加藤道也「朝鮮総督府官僚のアイルランド認識 : 時永浦三を手掛かりとして」『大阪産業大学経済論集』11(1)、2009年、123-155頁。
* 加藤道也「内地時代の時永浦三 : 朝鮮総督府出身官僚の内地行政官としての経歴をめぐって」『大阪産業大学経済論集』11(3)、2010年、349-389頁。

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