智洞

智洞の生涯とその教え

智洞（ちどう、1736年 - 1805年）は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した浄土真宗本願寺派の著名な学僧です。号は桃花房、または桃華坊であり、彼の宗教的な影響や学問における貢献は多大でした。彼の生涯は、教義の論争や宗派の分裂といった激動の時代背景の中で展開されました。さらに、彼の最期は悲劇的であり、彼の信念と理想に対する強い姿勢を示しています。

幼少期と前半生

智洞は、京都五辻勝満寺の近くで生誕しました。子供の頃から宗教に対する関心が強く、陳善院の僧樸に師事して浄土真宗を学びました。早くも1767年には、播磨国の智暹との本尊義争論で名声を得て、浄土真宗における学問的な地位を固めました。また、浄土真宗にとどまらず、華厳宗の教えにも通じており、幅広い知識を持った宗教者だったと言えます。彼は当時の仏書を集め、西本願寺学林において一切経の編纂にも関わりました。

三業帰命説と教義論争

1796年には、西本願寺の第7代能化職に就任し、前任の功存が執筆した『願生帰命弁』を基に三業帰命説（三業安心説、または新義とも呼ばれる）を広めました。この教義は、信者にとって非常に重要なものであったため、智洞は多くの支持を受けました。しかし、同時にこの説は異端視されることも多く、特に安芸の大瀛や河内の道隠を代表とする学僧たちから激しい批判にさらされました。

三業帰命説を巡る議論は単なる教義の対立に留まらず、場所を問わず、多くの門徒や信者を巻き込む大きな紛争（いわゆる三業惑乱）へと発展しました。宗門側もこの事態を収拾できず、最終的には江戸幕府が介入する事態となりました。1803年には、智洞が二条城で大瀛や道隠と討論を行うこととなり、その後、彼やその支持者たちが逮捕される事態に発展しました。

獄中での最期

1804年には智洞は江戸へ移送され、寺社奉行に取り調べを受けましたが、その際には罪人として扱われていました。1805年の春、智洞は回心状を提出しますが、すでに彼の運命は風前の灯火でした。10月22日、彼は八丈島への流罪が決定されるも、その前に獄中で70歳で息を引き取ることとなります。

論争の結末と智洞の影響

智洞の死後、1806年に寺社奉行は三業帰命説を異端と認定し、西本願寺の門主もこれを追認しました。このように、智洞の教義は一時的に否定されることになるものの、その後の宗門内には教義の整理が進みました。1807年には能化職が廃止され、1824年には勧学職が設置されるなど、大きな変化がもたらされました。
彼の教えや生き様は、後の浄土真宗のあり方に多くの影響を与えたことが、今も語り継がれています。

著作

智洞は多くの著作を残しており、特に『高僧和讃講林』や『般舟讃講林』などが知られています。これらの作品は、彼の宗教的・哲学的な考えを反映した貴重な資料となっており、今後も多くの研究が期待されています。

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