智顗

智顗（ちぎ）は、中国の南北朝時代末期から隋代にかけての僧侶であり、天台宗の開祖として知られています。彼は、538年に生まれ、597年に没しました。天台教学を大成した人物であり、「天台大師」や「智者大師」とも称されています。智顗は、慧文、慧思に次ぐ天台宗の第三祖とされていますが、龍樹を開祖とする場合、智顗は第四祖として数えられます。

生涯と業績

智顗は、仏教の教えを深く理解し、その普及に尽力しました。568年から7年間、金陵の瓦官寺で『法華経』や『大智度論』を講義しました。この講義を通じて、彼の教相判釈である五時八教が確立され、これは日本の仏教に大きな影響を与えることになりました。

五時八教とは、釈迦の教えを時間的な順序と内容によって分類したものです。智顗は、釈迦が50年の間に、最初に華厳経を説き、最後の8年の間に法華経、涅槃経を説いたとしました。この考え方は、中国や日本の天台宗で広く信じられていますが、近代仏教学では否定されています。しかし、現在でもこの教えを信奉する宗派が存在し、その影響は看過できません。

著書

智顗は、多くの著作を残しました。その中でも特に重要なのが、天台三大部と呼ばれる『法華玄義』、『法華文句』、『摩訶止観』です。

法華玄義: 『法華経』の奥義を解釈したもので、その思想の根幹をなすものです。
法華文句: 『法華経』の文言を詳細に解説したものです。
摩訶止観: 天台教学における実践的な瞑想法である止観を説いたものです。特に一念三千の思想が重要です。

その他にも、天台五小部と呼ばれる『観音玄義』、『観音義疏』、『金光明経玄義』、『金光明経文句』、『観経疏』などがあります。また、『維摩経玄疏』や『維摩経文疏』なども著しました。

霜月会

智顗の忌日には、霜月会という法会が行われます。この法会は一度途絶えましたが、天海によって復興されました。

関連文献

智顗の著作は、現代においても研究が続けられており、多くの翻訳や注釈書が出版されています。例えば、

法華玄義: 菅野博史による訳注や、多田孝正による解説があります。
法華文句: 菅野博史による訳注があります。
摩訶止観: 関口眞大による校注、村中祐生や菅野博史による訳注、新田雅章による解説などがあります。
天台小止観: 関口眞大による校注や訳注があります。

また、智顗の生涯や思想について書かれた資料や伝記も存在します。例えば、章安灌頂による「隋天台智者大師別傳」や、灌頂による「国清百録」、福原隆善訳注の『現代語訳一切経 2　隋天台智者大師別伝』などがあります。

参考文献

総合仏教大辞典編集委員会（編）『総合仏教大辞典』 下巻、法蔵館、1988年

関連項目

智顗の教えや影響は多岐にわたります。

教相判釈: 智顗が確立した仏教の教えの分類法です。
湛然: 天台宗第六祖であり、智顗の教えを継承しました。
最澄: 日本天台宗の開祖であり、智顗の思想を日本に伝えました。
円仁: 最澄の弟子であり、山門派の祖とされます。
天台寺門宗: 円珍を派祖とする宗派で、智顗を宗派の高祖としています。
中国仏教: 智顗の活動は中国仏教史において重要な位置を占めています。

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