書史会要

『書史会要』（しょしかいよう）は明代初期に、書家として著名な陶宗儀によってまとめられた書家の伝記集です。この作品は全9巻から成り立ち、古代から元代にかけての書家たちについて、豊富な情報を提供しています。明の書作品が私たちに多くの文化的遺産を伝えている中で、『書史会要』は特に重要な役割を果たしています。

この書物は、洪武9年（1376年）に初版が出版されました。その後、朱謀垔によって『書史会要続編』が刊行され、さらに画家の伝記をまとめた『画史会要』も著されました。これにより、『書史会要』は書道だけでなく絵画の歴史にも影響を与える存在となりました。

原刻本には、いくつかの前序が付されており、その中には宋濂や曹睿による序文、そして陶宗儀自身の序が含まれています。特に陶宗儀の伝記は、彼の書道への情熱や書家としての思想が伝わってきます。

この作品は、三皇五帝の時代から元代に至るまで、約400人以上の書家についての情報を時代順に述べています。正史に記載されないような無名の書家についても言及しており、これらの人物は『書史会要』を通じてのみ知られることとなりました。そのため、この書は散逸しがちな歴史的資料の重要な源となっています。

また、巻7にはパスパ文字に関する記述があり、これがまた非常に貴重な資料として評価されています。さらに、巻8の「外域」では、天竺（ランツァ文字）、畏吾児（ウイグル文字）、回回（アラビア文字）、日本の漢字以外の文字に関しても触れています。特に日本に関する記述では、仮名の発音を漢字で記載しており、これは外国人による日本語資料として歴史的に重要なものの一つです。

巻9では様々な書法についての考察が行われ、書道の技術的な側面にも焦点が当てられています。これにより、読者は書法の理論や実践に関する深い理解を得ることができます。

初版の『書史会要』は現在、いくつかの図書館に現存していますが、非常に希少です。その後、1929年には武進陶氏の逸園本が影印され、1984年にはその再刊も行われました。また、『四庫全書』に収められた版では漢字以外の文字が省略されているため、原本の重要な情報が失われています。

このように、『書史会要』は書道の歴史を理解するための重要な資料であり、古代から近世にかけての中国社会の文化的背景を知る手助けとなります。

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