曹植

曹植（そう しょく/そう ち）について

曹植は192年から232年まで生きた、中国の後漢末期から三国時代にかけての重要な文学者です。字は子建（しけん）で、現在の安徽省亳州市にあたる豫州の譙県出身です。彼は陳王に封じられたことから「陳思王」とも呼ばれており、魏の皇族でありながら、唐の詩人たちよりも前に中国文学の巨星として評価を得ました。特に、「詩聖」として名高く、彼の詩には「才高八斗」や「七歩の才」という句も残されています。

生涯と家族

曹植は曹操の五男で、生母は卞氏です。彼には異母兄として曹昂や曹鑠、同母兄に曹丕（後の文帝）や曹彰、同母弟の曹熊がいました。また、妻は崔氏で、子には曹苗や曹志が、娘には曹金瓠や曹行女がいます。曹昂と曹鑠が早世したことにより、建安2年（197年）から卞氏が正室となり、曹植は曹操の正嫡として育てられます。幼少期から詩を数十万言も覚えるほどの才能を持ち、彼の文才を怪しむ曹操に対し、自己の力量を示したエピソードが有名です。

曹植はその後、建安16年（211年）には平原侯に封じられ、その天才的な性格は詩人としてだけでなく、軍事面においても際立っています。様々な戦役に従軍し、当時の若者として活躍しましたが、酒を好むあまり不祥事を起こすこともしばしばありました。特に、曹操からの招集に酒に酔って応じられなかった出来事は、その後の彼の運命に影を落としました。

建安19年（214年）には臨淄侯に転封され、その後曹丕との後継争いが展開します。曹植は側近たちを大切にしつつ、曹丕からの迫害を受けることになり、その運命は波乱万丈です。建安25年（220年）に曹操が没すると、彼はさらに厳しい状況に置かれ、数回にわたって転封を余儀なくされました。

文学作品と詩風

文学者としての曹植は、建安文学の中で特に際立ち、その詩作には「名都篇」や「白馬篇」など、感情豊かでダイナミックな表現が見られます。彼の詩は、単なる表現にとどまらず、個人の感慨や政治信条が色濃く反映されており、後世の詩人たちにも大きな影響を与えました。彼の詩風は感情表現が豊かであり、友人との別れを詠んだ詩や晩年の苦しみを描いた作品も多く、文学史における多様性を象徴しています。特に「洛神の賦」は彼の最高傑作とも言われ、その背景には曹丕の妃である甄氏への恋情があると伝えられていますが、真偽は諸説あります。

また、詩人としての曹植は、詩文への評価を軽んじる一面もあり、戦に従い武勲を挙げることを本望とするとの発言が残されています。これは彼の文学的才能の裏に隠された含蓄や矛盾を示しており、文学者としての誇りと戦士としての理想が交錯しています。曹植の作品には、さまざまなジャンルの詩や歌曲が含まれており、彼の詩は後の時代の文人たちによっても高く評価されています。

総じて、曹植は三国時代の文化や文学を象徴する存在であり、彼の詩や生涯は、後の中国文学の発展に多大な影響を与え続けることでしょう。

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