大渡河

大渡河（だいとが）

大渡河は、中華人民共和国の四川省西部を流れる重要な河川であり、岷江の主要な支流に位置しています。この川は長江水系に属し、古くから沫水と呼ばれていたこともあります。

流路について

大渡河の源流は青海省玉樹チベット族自治州のバヤン・ハル山脈の南麓に始まります。この川は四川省に入り、さらにカンゼ・チベット族自治州の大雪山脈と邛崍山脈の間を南下します。流域にはアバ・チベット族チャン族自治州、カンゼ・チベット族自治州、雅安市、涼山イ族自治州、楽山市が含まれており、最終的に楽山で岷江に合流します。この流路は、主に険しい山岳地帯を流れるため自然の風景を楽しむことができます。

大渡河の源流には、多柯河や麻爾柯河があり、これらの川が合流して大金川となり、さらに小金川と合流することで大渡河と名付けられます。主要な支流としては青衣江（284km）、梭磨河、脚木足河などが存在します。大渡河はその長さや水量において岷江を上回り、楽山合流点より上流では大渡河の方が岷江の本流と考えられています。

歴史的な背景

大渡河は流れが急で水量も豊かであるため、古くから旅人にとって渡ることが難しい川でした。清朝の康熙帝の時代には、四川から西康や西蔵方面への交通を円滑にするため、雅安の西方に位置する瀘定の街に長さ約100メートルの吊り橋、瀘定橋が建設されました。この橋により、大渡河を横断することが容易になりました。

この川は中国の歴史においても重要な役割を果たしています。1863年、太平天国の翼王である石達開は四川省に進出しましたが、大渡河を渡ることができず、清軍に囲まれて降伏することになりました。また1935年には、中国共産党の長征の過程で、大渡河を渡るために22名からなる決死隊が結成され、瀘定橋を奪うことに成功しました。これによる戦いは「飛奪瀘定橋」として知られ、長征における勝利の一つとして中国の学校で教えられていますが、一部では史実を誇張しているとの批判も存在します。

1950年には瀘定橋の北側に川蔵公路のために大きな鉄の吊橋が完成し、伝統的な瀘定橋は歴史的な遺産として保存されています。これにより、今も尚多くの人々にとって大渡河は訪れる価値のある場所となっています。

大渡河はその流れや歴史、そして地域文化の重要な一部であり、訪れる人々にとっては自然と歴史を同時に感じられる貴重なスポットと言えるでしょう。

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