楊璟

楊璟（よう けい）

楊璟は、元末から明初にかけて活躍した武将で、その生涯は激動の時代を反映しています。儒学者の子として生まれながらも、武人の道を選び、朱元璋の信頼厚い部下として、数々の戦場を駆け抜けました。

初期の活躍

楊璟は、管軍万戸として朱元璋に従軍し、その才能を早くから発揮しました。1356年に朱元璋が集慶（現在の南京）を占領すると、楊璟は総管に昇進しました。翌年には、徐達が常州を陥落させた際、親軍副都指揮使に進んでいます。1358年には、胡大海の婺州攻撃に参加し、その陥落に貢献、枢密院判官に転じました。

陳友諒との戦い

その後、楊璟は陳友諒との戦いに参加し、その功績により湖広行省参政に抜擢されました。江陵に駐屯し、湖南の少数民族の抵抗を鎮圧しました。さらに、三江口に軍を駐屯させ、招討の功績を認められて行省平章政事に転じました。

広西平定戦

楊璟は、左丞の周徳興や参政の張彬を率いて、武昌の諸衛の軍を指揮し、広西の征討に臨みました。1368年春には、永州に進攻し、元の守将である鄧祖勝を撃破しました。鄧祖勝は、城を固く守り、徹底抗戦しましたが、楊璟の巧みな戦術の前に、ついに力尽き自害しました。永州を陥落させた後も、全州や宝慶を次々と攻略し、周辺地域をほぼ平定しました。

永州攻略では、当初、守将が頑強に抵抗しましたが、楊璟は西江上に浮橋を架け、城を急攻しました。一方、靖江攻略では、西濠の堤を決壊させ、城を守る兵を混乱させ、攻略に成功しました。

また、張彬が南関の民衆を皆殺しにしようとした際には、楊璟はこれを禁じ、民衆を守りました。その後も、楊璟は郴州に転戦し、両江土官を降伏させ、廖永忠と共に南寧路と象州を陥落させ、広西全域を平定しました。

その後の活躍

南京に凱旋後、楊璟は偏将軍として徐達に従い、山西に転戦しました。しかし、沢州での戦いに敗れ、その後、夏への使者として派遣されました。当時、夏を治めていた明昇は幼く、その母である彭氏と大臣たちが国事を切り回していました。楊璟は明昇に明への入朝を勧めましたが、大臣たちの反対により実現しませんでした。

帰国後、楊璟は湖広行省平章に転じ、慈利土官の覃垕が起こした反乱を鎮圧しました。1370年、楊璟は営陽侯に封じられました。1371年には、湯和に従い、夏の明昇を攻撃しましたが敗北。翌年には副将軍として、鄧愈に従い、辰州や沅州の少数民族の抵抗を鎮圧しました。

晩年と死後

1380年、楊璟は大将軍の徐達に従い北平に駐屯し、遼東で練兵に励みましたが、1382年8月、病のため死去しました。死後、芮国公に追封され、武信と諡されました。

楊璟の息子

楊璟の息子である楊通が後を継ぎましたが、1387年に雲南で敗れ、普定指揮使に降格されました。さらに1390年には、胡惟庸の獄に連座し、処断されました。これは、楊璟の武勲とは対照的な、悲劇的な結末と言えるでしょう。

楊璟の生涯は、元末から明初という激動の時代を生き抜いた武将の典型と言えます。彼の功績は、明朝の成立と安定に大きく貢献し、後世に語り継がれることとなりました。

参考文献

* 『明史』巻129 列伝第17

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