最後の晩餐 (ジョット)

『最後の晩餐』の解説

ジョットが制作した『最後の晩餐』は、1303年から1305年の間にパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に描かれたフレスコ画です。この作品は、キリストの受難物語の一場面を描写しており、特にヨハネによる福音書13章21-26節に基づいています。描かれた場面では、イエスが弟子の中から自らを裏切る者がいることを告げ、分かれた食事が行なわれる様子がリアルに表現されています。

表現技法とスタイル

この作品は、ビザンティン美術の伝統を受け継ぎつつ、ローマの影響も色濃く反映されています。屋内の広がりを感じさせるために、二つの壁面を省略した表現により、観る者が内側を覗き込むような効果を生み出しています。また、ジョットはイエスを裏切る者を察しようとする使徒たちの微妙な表情を詳細に描写し、その心情を視覚的に伝えています。使徒たちの配置は巧妙で、特にイスカリオテのユダがイエスの近くに座り、同じ皿に手を伸ばす様子が強調されています。

登場人物の描写

ユダは黄色の上着を羽織り、その存在感を際立たせています。一方、弟子のヨハネは、典型的な図像表現に従い、イエスに寄りかかりながら眠っている姿で描かれています。こうした配置によって、緊張感が生まれ、観る者に深い印象を与えます。中でも、イエスの心の動きが強調され、事の重大さを感じさせる作りになっています。

光と影の描写

作品の重要な要素として光と影の使い方があります。イエスの周りには光が描かれ、彼の神聖さを表現するために金箔が使われることが想定されていましたが、後世の加工によって光背が黒く覆われ、問題が生じました。また、使徒たちの光輪は金色の絵の具で塗られており、ユダには光が与えられていないのも特筆すべき点です。これらの描写は、彼らの神聖度の差を視覚的に強調しています。

モザイクと装飾

画面の上部には、部屋の屋根に描かれたモザイク装飾として二羽の鳥が描かれており、この作品が連作の一部であることを示しています。使用されているパステル色は統一感があり、他の連作作品と同様の色合いが使われているため、観る者にとって各キャラクターが瞬時に識別できるようになっています。これにより、物語の理解が容易になり、個々の人物の立体感が強調されます。

アルテ・ピナコテークのコレクション

ミュンヘンのアルテ・ピナコテークには、イエス・キリストの生涯を描いた祭壇画の連作としてなされた『最後の晩餐』があります。この作品は、スクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画よりも後に制作されたとされ、そこには着席の順番や表現に違いが見られます。1815年にルートヴィヒ1世によって購入され、現在はアルテ・ピナコテークに収められています。

まとめ

『最後の晩餐』は、ジョットの才能を示す重要な作品であり、彼の画技は高く評価されています。のちの時代に大きな影響を与えたこのフレスコ画は、視覚芸術における表現の新しい地平を切り開くものでした。細部の精緻さや物語の緊張感、霊的な光の使い方など、様々な観点からこの作品をひも解くことは、今後の美術研究においても多くの示唆を与えるでしょう。

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