最後の酔い

「最後の酔い」（La última curda）は、タンゴの巨匠アニバル・トロイロが作曲した名曲です。1956年に発表され、カトゥロ・カスティージョによる詩が付けられています。この曲は、タンゴの深い感情とアルゼンチンの文化を象徴する作品として、広く知られています。

カトゥロ・カスティージョは、「たそがれのオルガニート」など、数々のタンゴ作品で作詞を手掛けた人物です。「最後の酔い」では、失恋の痛みや孤独、そして過ぎ去った日々への郷愁が、彼の独特な言葉で表現されています。曲名の「curda」は、ラプラタ地方の俗語であるルンファルドで「酔い」を意味します。元々は「クルド人」を指す言葉でしたが、「酔っ払ったインディオ」から転じて「酔っ払い」「酔い」という意味になったとされています。

この曲の最も有名な音源の一つは、アニバル・トロイロ楽団による演奏で、エドムンド・リベロが歌唱を担当したものです。トロイロのバンドネオンの音色とリベロの情感豊かな歌声が、楽曲の魅力を最大限に引き出しています。他のタンゴ楽団もこの曲を録音していますが、トロイロ楽団の演奏は特に評価が高く、多くの人々に愛されています。

「最後の酔い」は、映画音楽としても使用されています。1988年のアルゼンチン映画「スール/その先は…愛」では、ロベルト・ゴジェネチェがこの曲を歌うシーンがあり、映画の雰囲気を盛り上げています。近年では、タマンゴのカロリーナ・ロドリゲス・ラライアによる歌唱がYouTubeで公開され、新しい世代のリスナーにもこの曲の魅力が伝わっています。

また、ヌエバ・カンシオンの代表的なグループであるキラパジュンも、この曲をカバーしています（アルバム「Quilapayún 5」に収録）。彼らの演奏は、タンゴの伝統的なスタイルとは異なり、独自の解釈が加えられています。

「最後の酔い」は、タンゴの歴史において重要な位置を占める作品であり、その美しい旋律と情感豊かな歌詞は、時代を超えて人々の心を捉え続けています。失恋の悲しみ、過ぎ去った日々への郷愁、そして人生の苦さを、この曲を通して感じることができるでしょう。

参考情報：
* Todotango - La última curda http://www.todotango.com/musica/tema/84/La-ultima-curda/

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