アニバル・トロイロ

アニバル・トロイロ（1914年7月11日 - 1975年5月18日）は、アルゼンチン・タンゴの黄金時代、1930年代からその才能を発揮した、作曲家であり、卓越したバンドネオン奏者でした。「ピチューコ」または「ゴルド（デブ）」の愛称で親しまれました。

略歴

1914年、ブエノスアイレスで生を受けたトロイロは、幼少の頃より音楽の才能を開花させました。10歳で初めてバンドネオンを手に入れると、わずか11歳で楽団に参加するほどの腕前を披露しました。オスバルド・プグリエーセ楽団やファン・ダリエンソ楽団など、数々の著名なタンゴ楽団でバンドネオン奏者として経験を積みます。そして1937年、自身の楽団を結成し、リーダーとして新たな音楽の道を歩み始めました。

トロイロの音楽の特徴は、華麗かつ重厚なメロディーとハーモニーを大切にしている点にあります。フアン・デ・ディオス・フィリベルト作曲の「バンドネオンの嘆き」における、トロイロ楽団の凝ったバンドネオン変奏は特によく知られており、楽団の代表的なレパートリーとして親しまれています。また、彼自身が作曲した「スール」（1948年）や「最後の酔い」（1956年）は、タンゴファンから絶大な人気を誇ります。トロイロは歌を重視し、「マリア」や「スール」など、歌入りの録音も数多く発表しており、これらの楽曲は現在でもタンゴ愛好家の間で広く愛されています。

1975年5月18日、アニバル・トロイロは生涯を閉じました。その生涯で彼は、488曲（531曲という説もあります）もの楽曲を作曲し、タンゴ音楽界に多大な貢献をしました。

アニバル・トロイロ楽団

アニバル・トロイロ楽団は、1975年まで活動を続け、数多くの録音を残しました。楽団は、ロベルト・ゴジェネチェやエドムンド・リベロといった、著名な歌手を輩出しました。特に、リベロが歌う「スール」は、トロイロ楽団の演奏で今も頻繁に演奏され、聴かれています。また、ピアニストでは、オルランド・ゴニやホセ・バッソが楽団に在籍していました。

アストル・ピアソラが、トロイロ楽団に加入したエピソードは有名です。ある日、バンドネオン奏者のトト・ロドリゲスが病欠した際、ピアソラはトロイロの前でバンドネオンの腕前を披露し、その場で採用が決まったといいます。

代表作品

María - マリア
La última curda - 最後の酔い
Sur - スール
Responso - レスポンソ
Garúa - 氷雨
Che Bandoneón - チェ・バンドネオン
Barrio de tango - タンゴの街
La Trampera - ラ・トランペーラ

アニバル・トロイロの音楽は、その没後も色あせることなく、タンゴ音楽の重要なレガシーとして、世界中の人々に愛され続けています。

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