月以外の地球の衛星

地球の月以外の衛星

地球の周りを公転する天体として、我々が最もよく知るのが月ですが、実は月以外にも地球の衛星となりうる天体が存在します。ここでは、過去に提唱されたものの否定された衛星、一時的に地球の衛星となった天体、そして衛星のように見える天体について解説します。

一時的な衛星

過去には、一時的に地球の周回軌道に入った自然物が観測されています。これは、地球の重力に一時的に捕らえられた小惑星などが該当します。これまでに観測された代表的な例として、以下の3つが挙げられます。

2006 RH120: 直径3mから6mの小惑星で、アテン群に属しています。地球の公転軌道と似た軌道を持つため、地球に接近しやすく、2006年11月から2007年9月にかけて地球を3周しました。2028年にも再び地球の衛星となる可能性があります。
2020 CD3: 直径約1mから1.5mの微小な小惑星で、2020年2月に地球の衛星軌道に入っていることが確認されました。軌道は不安定で、2020年春ごろに地球軌道を離れました。
2024 PT5: アルジュナ群に属する小惑星で、2024年9月末に地球の周囲を周回すると予測されています。直径は約10mと、これまでのミニムーンよりもやや大きいと見られています。

これらの天体は、地球の重力に一時的に捕らえられることで、一時的な衛星となります。しかし、軌道が不安定なため、いずれは地球の重力圏から離脱します。

衛星のように見えるもの

地球の衛星のように見える天体には、準衛星とトロヤ群小惑星があります。

準衛星

準衛星は、地球近傍天体の一種で、地球とほぼ同じ軌道で太陽の周りを公転しています。地球から見ると、まるで地球の周りを公転しているように見えますが、実際には太陽の重力によって支配されており、地球の衛星ではありません。

地球の準衛星として知られているものには、クルースン、イジュドゥバル、カモオアレワなどがあります。

トロヤ群小惑星

トロヤ群小惑星は、惑星と太陽のラグランジュ点のL4またはL5に存在する小惑星です。地球のトロヤ群小惑星は、2010 TK7が唯一確認されています。

ラグランジュ点は重力的に安定しているため、小惑星は比較的安定した軌道を保ちますが、他の惑星の重力の影響で、ラグランジュ点を中心にふらふらと移動します。地球から見ると、ループを描くように回転して見えますが、準衛星と同様に、地球の衛星ではありません。

学説上の衛星

月の誕生を説明するジャイアント・インパクト説によれば、かつて地球には2つの月が存在したという説があります。この説では、原始地球とテイアの衝突で生じた破片から、大きさが3倍異なる2つの月が誕生し、その後衝突して現在の月になったとされています。

また、地球と月のラグランジュ点には、コーディレフスキー雲という塵の雲が存在するという説がありますが、これはまだ確証が得られていません。

存在しなかった衛星

過去には、地球の第2の衛星の存在が主張されたことがありましたが、いずれも否定されています。

プティの主張: 1846年、天文学者のフレデリック・プティは、地球を周回する流星を発見したと主張しましたが、軌道要素の不確実さからすぐに却下されました。
* ヴァルテマットの主張: 1898年、天文学者のゲオルク・ヴァルテマットは、月の摂動から第2、第3の衛星の存在を予測しましたが、観測された現象は実際には黒点でした。また、これらの衛星は後に観測されておらず、存在は否定されています。

これらの他にも、いくつかの衛星の存在が主張されましたが、いずれも確認されていません。

まとめ

地球の衛星は、月だけではなく、一時的な衛星や、衛星のように見える準衛星、トロヤ群小惑星など、多様な天体が存在します。また、過去には存在が提唱されたものの否定された衛星も存在しました。これらの研究は、地球や他の惑星の衛星形成過程を理解する上で非常に重要です。

今後も観測技術の進歩により、新たな地球の衛星候補が発見される可能性があります。これにより、地球の衛星に関する知見がさらに深まることが期待されます。

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