有地品之允

有地品之允（ありち しなのじょう、1843年4月14日 - 1919年1月17日）は、明治から大正時代にかけて活躍した、稀代の海軍軍人、政治家です。陸軍での経験を経て海軍に転じ、連合艦隊司令長官という要職にまで上り詰めた人物として知られています。

有地は長州藩士の家に生まれ、幼少期から武術に長けていました。戊辰戦争では、奥羽地方における戦いに参加。戦後、欧州に渡り、普仏戦争を視察するなど、近代軍事の先端技術に触れる機会を得ます。帰国後は陸軍少佐、御親兵大隊長などを務め、侍従も経験しました。

その後、海軍に転じ、着実にキャリアを積んでいきます。「日進」艦長、「比叡」、「筑波」艦長など重要な艦の指揮を執り、艦隊運用や艦船管理に関して豊富な経験を培いました。特に「筑波」艦長時代には、遠洋航海における脚気対策に大きく貢献します。当時の航海では脚気による死者多数という問題がありましたが、海軍軍医・高木兼寛の指導の下、洋食導入などの対策を実施。その結果、脚気による死者を一人も出さず、航海の成功に大きく貢献しました。

艦長経験を経て、有地は軍令部次長、参謀本部海軍部第1局長など、海軍の中枢で活躍します。横須賀軍港司令官、海軍機関学校校長、海軍兵学校校長などを歴任し、海軍教育にも尽力しました。海軍兵学校校長時代には、柔道を教育に取り入れるなど、時代の変化に対応した教育改革にも取り組んだことが知られています。

日清戦争では、呉鎮守府司令長官として重要な役割を果たし、戦後、再び常備艦隊司令長官に就任。連合艦隊司令長官を兼務し、日本の海軍の頂点に立ちました。しかし、台湾におけるイギリス商船に対する臨検事件で責任を問われ、予備役に編入されるという苦い経験も味わっています。

軍務から退いた後も、有地は政治的な活動に力を入れていきます。男爵に叙せられ、貴族院議員として10年間活動。また、帝国海事協会の初代理事長となり、有栖川宮威仁親王を総裁に迎え、帝国義勇艦隊（後の海防義会につながる組織）の結成にも貢献しました。

晩年は枢密顧問官を務め、日本の近代化に貢献しました。1919年、肝臓がんで死去。青山墓地には、本名ではなく「一葦乗海居士」と刻まれた墓碑が建てられています。

有地品之允は、軍事、政治、教育など、多様な分野で活躍した人物でした。その生涯は、明治・大正時代の日本の近代化を象徴する、興味深いものです。彼の功績は、現代においても高く評価されています。数々の勲章や外国勲章を受章し、その功績は日本の海軍史、ひいては日本の近代史に大きな足跡を残しました。彼の業績は、単なる軍事上の貢献にとどまらず、日本の近代化における重要な役割を担ったと言えるでしょう。彼の残した著作や記録は、現代においても研究者の注目を集めており、日本の近代史を理解する上で貴重な資料となっています。

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