有沢広巳

有沢広巳の生涯と業績

有沢広巳（ありさわ ひろみ）は、1896年2月16日に高知県に誕生した日本の著名な統計学者および経済学者です。彼は1988年3月7日に心不全で亡くなるまで、実証主義に基づいた研究を行い、日本の経済界に大きな影響を与えました。

教育と経歴

有沢は高知中学を卒業後、第二高等学校を経て東京帝国大学に進学します。経済学部の第一期生として、彼は糸井靖之の下で統計学を学び、河合栄治郎の講義からも多くを吸収しました。大内兵衛に師事し、マルクス[[経済学]]にも親しむこととなります。1922年に大学を卒業した有沢は、助手を経て1924年には助教授となりました。

彼の学問的キャリアは順調に進んでいたものの、1926年から1928年には、医学部の助教授としてドイツに留学。そこでの経験が、彼の思想形成に大きな影響を与えました。特に、ヴァイマル共和政に感銘を受け、帰国後にはナチスを強く批判します。

政治活動と治安維持法違反

1938年には人民戦線事件により治安維持法違反で起訴され、東大を一時休職しますが、1944年には無罪判決を受けます。戦時中は昭和研究会に参加し、「日本経済再編成試案」を策定しましたが、財界からの反発を受けました。同時に、秋丸機関に関わり、欧米と日本の経済を比較する研究を行いました。

敗戦直後の1945年には東大経済学部に教授として復帰し、吉田茂の私的ブレーンとして経済政策に貢献しました。また、戦後復興期には傾斜生産方式の立案に関与し、石炭小委員会の委員長としてその実現に向けて尽力しました。

日本の統計学の先駆者

1950年に経済学博士号を取得した有沢は、経済学の分野での革新的な研究を続け、「ダグラス・有沢の法則」を実証します。これは、家計の主要労働力の所得水準と、それに付随する労働力の就業率との間に負の相関関係があるというものです。この業績は、統計学と経済学の両方に影響を与えました。

1956年に東京大学を退官した後は、法政大学で教授および総長として活動し、さらに原子力委員会の委員長代理としても活躍しました。彼は日本の原子力政策の推進者として知られ、1986年には日本原子力産業会議年次大会で安全確保のための提言を行いました。

最晩年と受賞歴

有沢はその生涯にわたり、多くの名誉を受けています。1966年には叙勲一等授瑞宝章、1975年には旭日大綬章、1981年には文化功労者に選ばれました。1988年には正三位に叙せられ、経済学界や統計学界における彼の功績は今もなお評価されています。

1988年に亡くなった有沢広巳の業績は、日本の経済政策や統計学に深く根付いています。彼の著作も多数残っており、後世への影響は計り知れません。特に、彼の研究は統計学の発展に寄与し、多くの実証的な研究の基盤となりました。彼の遺した言葉や業績は、今でも多くの学問的議論において重視されています。

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