朋党

朋党（ほうとう）について

朋党とは、前近代の中国及びその周辺地域において、同じ思想や利害を持った官僚たちが結成した政治的集団のことを指します。このような集団は、特に中国における官僚制度のなかで重要な役割を果たしていました。

朋党の形成と儒教の視点

儒教においては、朋党の形成は批判的に捉えられていました。『論語』の中で孔子は、「君子は矜にして争わず、群れて党せず」と述べ、君子とは個々の価値を重んじ、集団に頼ることなく自己を持つべきであると教えています。しかし、実際の歴史には朋党がしばしば形成され、特に政変の一因として反対派から攻撃を受けることがありました。代表的な例として「党錮の禁」があります。この現象は前近代中国において常に存在し、さまざまな政治的変化を引き起こす要因となっていました。

牛李の党争

朋党の発展を象徴するのが、唐の後期に起こった牛李の党争です。これにより、朋党が従来の貴族社会の血縁や婚姻に基づくものから、より学問や政策に基づく新たな形成へと移行する転機を迎えました。牛党と李党との対立は、藩鎮に対するスタンスや科挙制度への関与の違いから生じました。牛党は藩鎮弾圧には消極的で科挙には積極的であり、李党はその逆の立場をとっていました。

宋代の朋党と政治的言論

宋代に入ると、官僚たちの言論活動が盛んになりました。「議」に加え「対」の制度が導入され、官僚が皇帝への直接上奏を行える機会が増えました。また、科挙制度により、合格者が血縁や婚姻関係に関わらず登用されるようになったものの、上位の官職者の推薦が必要となり、同じ年に科挙に合格した者同士や同じ職場・地域の人間関係が昇進に影響を与えるようになりました。これによって朋党の形成がさらに促進されました。

その中で「君子有党論」という考え方が登場し、政治的意見に基づく朋党の存在が正当化されるようになりました。特に王禹偁や欧陽脩といった著名な政治家たちは、君子の朋党と小人の朋党の違いを説き、小人の朋党は排除すべきであるとしつつ、君子の朋党は国家に貢献するべきと主張しました。

朋党への厳しい抑圧

しかし、北宋の政治においては朋党間の対立が反対派を「小人の朋党」として非難し、政治的混乱を引き起こす要因となりました。特に皇帝が権力を強化する中で、朋党が皇帝の権力行使を脅かす存在として見なされ、抑圧の対象となりました。南宋の高宗や明の洪武帝、清の雍正帝の時代には朋党に対する厳罰が命じられ、朋党の存在そのものが否定される結果になりました。

朋党の現代的視点

平田茂樹は、現代の国家における朋党の位置づけについて、国家が皇帝を頂点とする「政党」、朋党はその内部の「派閥」として位置づける見解を示しています。これにより、中国独自の社会的結合を反映した朋党の意義を考察することができます。

このように、朋党は中国の政治史において、多くの対立や討論の中心であり続け、その後の政治的構造にも影響を及ぼしました。

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