小納戸

小納戸（こなんど）とは

小納戸は、江戸幕府における役職の一つで、将軍の側近として仕える役職です。将軍が日常生活を送る江戸城本丸御殿中奥において、将軍に近侍し、身の回りの世話や細かな事務を担当しました。役高は500石で、小納戸の長である小納戸頭取は1500石でした。若年寄の管轄下に置かれ、御目見以上の格式を持ち、布衣の着用が許されていました。小姓と比較すると職務範囲が広く、その人数は4代将軍家綱の時代には20人程度でしたが、幕末には100人を超えるほどに増加しました。

小納戸の任命

小納戸には、旗本や譜代大名の子弟が選ばれました。また、部屋住みや他の役職からの転任の場合には、目付を通じて複数回の面接が行われ、厳選された人材が選ばれました。最終的には、将軍が吹上庭から候補者を観察し、決定しました。任命後、3日以内に登城し、各自が特技を披露しました。

小納戸には、御膳番、奥之番、肝煎、御髪月代、御庭方、御馬方、御鷹方、大筒方などの役割があり、個々の性質や特技に応じて担当が割り当てられました。また、文芸を磨くため、吹上庭園内には漢学、詩文、書画、遊芸、天文、武術などを学ぶことができる施設があり、優れた者は雑役を免除され、同僚の指導にあたることもありました。

小納戸の職務

小納戸の職務は多岐に渡りました。将軍が食事をする際には、膳奉行の立会いのもと、小納戸御膳番が毒味を行い、異常がなければ食事を準備し、小姓に渡しました。食事後には、残された食事の量を計測し、奥医師から質問があれば回答しました。このように、小納戸は毒味役と将軍の健康管理を兼務していました。

その他にも、洗顔や歯磨きの準備、月代を剃り、髪を結うなど、将軍の身の回りの世話も担当しました。特に、御髪月代は将軍の肌に直接触れるため、熟練の技術が求められました。また、御馬方は江戸市中で火災が発生すると、現場に急行し、状況を将軍に報告しました。小納戸は、将軍に近侍する機会が多いため、才知に長けている者は昇進の機会に恵まれていました。

小納戸から昇進した人物

小納戸を経験し、後に重要な役職に就いた人物もいます。

中根正盛：小納戸から御側に取り立てられました。
柳沢吉保：小納戸から側用人に出世しました。
遠山景元：小納戸から南町奉行、北町奉行を歴任しました。

参考資料

松平太郎「第四章 將軍及其近侍 / 第四節 小納戶」『江戸時代制度の研究. 上巻』、武家制度研究会、1919年、361-365頁、NDLJP:980847。
竹内誠『徳川幕府辞典』東京堂出版、2003年。ISBN 4-490-10621-1。

関連項目

御側御用取次
奥右筆

外部リンク

『小納戸』 - コトバンク

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