朝鮮民主主義人民共和国ウォン

北朝鮮ウォンの概要

北朝鮮の通貨、北朝鮮ウォン（通称：北朝鮮ウォン）は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の公式な通貨単位です。その通貨は、1947年12月6日にソ連軍の監督のもとで導入され、当時流通していた朝鮮銀行券と置き換えられました。この際、北朝鮮人民委員会による保障文言が表面に記載されており、裏面には「民主朝鮮」の文字がハングルで表記されています。

北朝鮮中央銀行は1970年代以降、逐次通貨改革を実施しており、特に1959年にはデノミネーションが行われ、100ウォンが新しい1ウォンと交換されました。その後も、1979年と1992年に新紙幣の発行が行われましたが、あくまで旧紙幣との1対1での交換がなされる形でした。

通貨価値

北朝鮮ウォンは、米国の外交専門誌「フォーリン・ポリシー」によると、世界で最も価値が低い通貨の一つとされています。特に2009年のデノミネーションが実施された際には、100対1の交換比率が設定され、多くの市民が市内の闇市場で外貨への両替を試みる事態になりました。この混乱のせいで市場が麻痺し、商品価格が急騰、特に豚肉は1キログラムあたり50ウォンから2000ウォンに跳ね上がったという記録があります。

市民たちは不安を抱え、旧ウォン紙幣を破棄したり、破産の末に自殺するケースが相次ぎました。これに対し、北朝鮮の政府は金英逸首相が船の上で異例の謝罪を行い、経済混乱の収拾を試みたこともありました。

外国通貨との関係

北朝鮮の住民は1990年代から続く経済危機の中で安定した通貨として人民元や米ドルを求めるようになり、特に平壌ではタクシー料金が米ドルで表示されるほどに外貨依存が進んでいます。さらに、北朝鮮ウォンは国内でだけ流通し、外国人による使用は制限されていますが、実際には闇市での取引や外貨の流通は依然として行われているという情報もあります。

為替レートと流通状況

北朝鮮の公式な為替レートは、1997年から固定されており、1ドル=2.16ウォンであるとされています。しかし実際の相場は、公定為替レートと大きく乖離しており、経済難によって実勢為替レートが1ドルあたり12,000ウォン近くで取引されているとの報告があります。また、北朝鮮ではウォンの下に「チョン」という補助単位も存在していますが、ハイパーインフレーションの影響で実質的に機能していないのが現状です。

中朝国境地域と韓国での扱い

北朝鮮と中国の国境地域では、観光客向けに北朝鮮ウォンが「お土産」として販売されることもあります。一方で、大韓民国においては北朝鮮ウォンの持ち込みが禁止されており、特定の場所ではお土産としての販売が行われているのみです。

肖像と流通貨幣

北朝鮮ウォン紙幣には金日成主席の肖像が使用されていますが、その扱いは厳重で、肖像部分を傷つけることは不敬罪に当たります。2009年11月30日通用開始の新通貨には5000ウォン札を除き金日成の肖像は描かれず、以後のデザインも変わっています。

北朝鮮ウォンは、地域による物価や外貨の流通、政府の政策など多くの要因によって影響を受けており、国際的な視点から見ても特殊な存在感を持っています。

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