朝鮮鉄道900形蒸気機関車

朝鮮鉄道900形蒸気機関車：軽便鉄道の枠を超えた大型機

朝鮮鉄道900形は、1937年に朝鮮鉄道が導入した貨物用テンダー式蒸気機関車です。ここでは、準同形である台湾総督府鉄道LD50形蒸気機関車（後の台湾鉄路管理局LDT100型蒸気機関車）についても解説します。

導入の背景

1924年の礼成江橋梁の完成後、黄海線の輸送量が急増しました。従来の軽便鉄道用蒸気機関車では輸送需要に対応しきれず、早急な輸送力増強が求められました。周辺幹線と同じ標準軌への改築も検討されましたが、費用と期間がかかるため、短期的な解決策として、従来の軽便鉄道用機関車の枠を超える大型貨物用機関車として900形が設計・製造されることになりました。

それ以前にも、咸北線向けに1935年に納入された1D形テンダー機関車810形が存在しましたが、900形はそれを上回る超大型機として設計されました。

構造の特色

900形は、車輪配置2-8-2(1D1)の単式2気筒テンダー機関車です。朝鮮鉄道は私鉄であり、沿線で産出する低発熱量の石炭を使用する必要があったため、火格子面積を2.1m2と広く取りました。これにより火室の横幅が広がり、燃焼を良好にするために水脚を長く取る必要がありました。

しかし、762mm軌間であるため、ボイラー中心線を高くすることができません。また、1,067mm軌間の車両に比べて主台枠間隔が狭いという問題もありました。そこで、鋳物製で後方が大きく広がった後台枠を主台枠の後ろに挿入し、この後台枠の間に火室を収めることで、内径1,200mmのボイラーを搭載しながら、ボイラー中心高さを1,900mmに抑えることに成功しました。

広火室の大型ボイラーを1軸従台車と組み合わせると、動輪の軸重バランスが後ろに偏るという問題が生じることがありますが、900形ではシリンダ台より前の前台枠を重量2tの大型鋳物で構成し、バランスウェイトを兼ねることで解決しました。また、ボイラー自体も煙管・煙室を前へ寄せることで重量バランスを取っています。

900形は、当時の「軽便鉄道」の機関車としては超大型であり、軸距も動軸のみで3,180mm（エンジン部全軸距7,130mm、機関車全軸距11,730mm）とかなり長くなっています。また、同社の曲線基準（半径40m）を通過させることも課題となりました。このため、先従台車に各140mm、第1動輪に10mmの横動を与えましたが、図上設計だけでなく、原寸大の木製模型を製作し、設計通りに通過できるかどうかの確認を行っています。

運用

900形は、汽車製造で1937年に7両、1944年に2両、日本車輌製造で1942年に3両、日立で1944年に3両、合計15両が製造されました。従来の朝鮮鉄道の762mm軌間機関車はピン・リンク式連結器で空気制動がありませんでしたが、810形以降の機関車については輸送量が非常に大きいため、自動連結器と空気制動を装備しました。列車重量250tほどの編成を50km/hで牽引し、運行も円滑だったと伝えられています。

当初は咸北線への投入も予定されていましたが、竣工時点で標準軌への改軌が進められていたため、黄海線に投入されることになりました。1944年4月1日には、朝鮮鉄道が朝鮮総督府に買収（国有化）され、朝鮮総督府鉄道籍となりました。

第二次世界大戦後、912 - 914は韓国国鉄혀기11形혀기11-12 - 혀기11-14となりました。これとは別に、朝鮮戦争時に米軍から2両が持ち込まれ、日本車輌製の혀기US7と三菱製の혀기US8（製造番号722）となりました。のちにその番号のまま韓国国鉄籍となりました。

韓国国鉄に属した900形グループは、廃車後5両全てが保存されています。総督府鉄道引き継ぎ車の혀기11形（元900形）の保存先は、Samsung Transportation Museumに혀기11-12、鉄道博物館 (韓国)に혀기11-13、龍平リゾートに혀기11-14となっています。また戦後導入の혀기US7（現車表記혀기-7）が仁川広域市南洞区で、혀기US8（現車表記혀기-8）が全羅南道新安郡黒山島で保存されています。

台湾総督府鉄道LD50形（→台湾鉄路管理局LDT100型）

台湾総督府鉄道では、特殊狭軌の台東線向けに準同形（ピン・リンク式連結器、空気制動なし）を1942年以降日本車輌製造に発注し、LD50形として導入しました。発注総数は7両で、1942年に4両、1943年に3両が製造されました。しかし、このうちLD505 - LD507は台湾に到着していません。LD505 - LD506は輸送中に輸送船がアメリカ海軍に爆撃されて沈没し、LD507は輸送せず日本に残された後、朝鮮戦争時に再生されて米軍により大韓民国に輸送され、韓国国鉄혀기US7となりました。

太平洋戦争後は、台湾鉄路管理局に引き継がれ、改番により形式をLDT100型、車番をLDT101 - LDT104に改め、戦後も引き続き台東線で運用されました。廃車後は、花蓮鉄路文化園区にLDT103が保存されています。

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