木曜会 (夏目漱石)

木曜会の成り立ちとその文化的意義

木曜会（もくようかい）は、夏目漱石の自宅にて、彼の教え子や若手文学者たちが集い、毎週木曜日に行われた談話会である。この会は、漱石の教員時代の影響を受けた人々が、彼の知性や文学観を直接受け継ぎ、議論する場となった。

会の設立背景

漱石の元には当初、教え子の小宮豊隆や鈴木三重吉、森田草平らが訪れていたが、次第にその足が増え、仕事に干渉されることが増えてきた。そこで鈴木三重吉の提案を受け、1906年の秋から毎週木曜日の午後3時以降に面会することが決定された。この日の集まりは誰でも参加可能とし、かつての教え子以外の学生や文人たちも増え、漱石の書斎はサロンのような雰囲気となっていった。

集中したメンバー

木曜会に集まったメンバーは実に多彩であり、津田青楓の著作『漱石山房と其弟子達』にもそのスタイルが描かれている。参加者には、小宮・鈴木・森田の他、赤木桁平、阿部次郎、安倍能成、岩波茂雄、内田百閒らが名を連ね、特に小宮、鈴木、森田、阿部の四人が重要な役割を果たしていたため、「四天王」とも称されていた。

さらに、中勘助や江口渙といった小説家や、和辻哲郎、滝田樗陰のような学者も参加し、後の新思潮派の作家たち、例えば芥川龍之介や久米正雄、松岡譲といった面々も学生時代からこの会に顔を出していた。

漱石の指導スタイル

漱石は正式な師弟関係を持たず、自由で開放的な雰囲気を重んじていた。阿部次郎の言葉を借りれば、漱石は自然に集まってくる若者たちを寛容に受け入れ、疎外感を与えないよう心がけていた。彼は自らの作品への批判を歓迎し、集まった若者たちが自由に意見を交わす空間を創出していた。

和辻哲郎はその様子を「漱石を核とするこの若い連中の集まりは、フランスでいうサロンのようなものになっていた」と表現し、参加者たちが知的刺激に満ちた楽しい時間を過ごしたことを語っている。

会の変化と終焉

漱石が1916年に亡くなると、木曜会はその命日に合わせて「九日会」と改称され、以降も続けられた。最初の九日会は1917年1月9日に開催され、その後1937年4月9日まで継続された。このように木曜会は、漱石の文学だけでなく、その精神と相互の交流の場が継承され、豊かな文化的流れを生み出す源泉であった。

このように木曜会は、漱石を中心とした文学者たちの意見交換の場であり、彼らが互いに影響を与え 合いながら成長していく重要な場面であったと言える。

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