末永直登

末永 直登

末永 直登（すえなが なおと）は、1976年7月23日に鹿児島県鹿児島市で生まれたプロドリフトドライバーです。身長170cm、体重65kg、血液型はRh+O型。ニックネームは「なおと」や「BANCHO」として親しまれています。同じくドリフトドライバーとして活動する末永正雄選手は実弟にあたります。また、ドライバーとしてだけでなく、過去にはエビスサーキットの社員として、企画・広報業務やドリフトスクールの講師、ドリフトタクシーのドライバーなども務めていました。

彼のモータースポーツキャリアは、小学校に入学する前からポケットバイクに乗り始めたことに遡ります。その後、20歳頃まで二輪のロードレースに打ち込みますが、度重なる怪我に加え、カテゴリーが上がるにつれて機械への依存度が高まる現代のモータースポーツのあり方に疑問を抱き、一時的に活動を休止しました。

鹿児島県立武岡台高等学校を経て鹿児島大学に進学。大学時代にドリフトと出会い、AE86でその世界に入り込みます。在学中は自動車部に所属し、ドリフトに明け暮れる日々を送りました。大学へ進学したきっかけは、高校時代に二輪レーサーを目指していた彼に、バイクショップを経営していた父親が「大学に行けばレース活動を応援する」と約束したからだといいます。しかし、最終的にドリフトへと転向。大学時代はドリフト活動の資金を稼ぐため、講義を犠牲にしてアルバイトに熱中した結果、卒業までに7年間を要しました。

大学卒業後は上京し、会社員として働きながら、休日を利用してドリフトを続ける生活を送ります。この時期に通っていたエビスサーキットで、後のチームメイトとなる同サーキット支配人、熊久保信重氏と出会いました。

D1グランプリ（D1GP）への本格参戦は、弟の正雄選手と同じ2002年から始まりました。参戦当初は資金面での困難なども重なり、すぐに目立った成績を上げることはできませんでしたが、2005年にD1GPで初めてポイントを獲得します。また、同年にスタートしたD1ストリートリーガル（D1SL）のプレシーズンマッチでは、エビスサーキットで開催された第1戦で見事優勝を飾りました。

2006年には、大学卒業後から勤務していた機械関連の会社を退職し、エビスサーキットへの転職を決断します。この年のD1GPでは、開幕戦にはECR33スカイラインで参戦しましたが、その後熊久保氏率いるチームオレンジに加入し、マシンをスバル・インプレッサ（GC8）に変更しました。

2008年は、D1GPでは予選通過が2度に留まるなど苦戦しましたが、同時に参戦していたD1SLでは圧倒的な強さを見せ、全7戦中5戦で優勝。見事シリーズチャンピオンの座を獲得し、ドリフトドライバーとしての名を広く知らしめました。

2009年からは、前年まで熊久保氏が使用していた三菱・ランサーエボリューションIXにマシンを変更して参戦。この年はシリーズ28位でしたが、2010年は13位、2011年は11位と着実に成績を向上させました。そして2012年、ランサーエボリューションXにマシンチェンジした年に、得意のエビスサーキットで開催された第4戦で待望のD1GP初優勝を果たしました。

2013年からは、RB26DETTエンジンを搭載した日産・S15シルビアを新たな相棒とします。この年は最終戦までチャンピオン争いを演じる活躍を見せましたが、惜しくもシリーズ2位でシーズンを終えました。翌2014年はシリーズ9位、2015年は同5位、2016年は同9位と、優勝には届かなかったものの、常に上位争いに絡む安定したパフォーマンスを見せ続けました。

2017年には、長年愛用してきたヨコハマタイヤからワンリタイヤに変更。さらに、第4戦の舞洲大会からは、S15シルビアのエンジンをトヨタ製の2JZ-GTEに変更するという大胆な仕様変更を行いました。また、この年は熊久保氏と共に、全日本ダートトライアルにもトヨタ・86でスポット参戦するなど、活動の幅を広げました。

2018年はタイヤをゼスティノタイヤ（FIA IDCではヴァリノ）に変更。このシーズンは準優勝2回、3位2回を獲得し、D1GPシリーズ総合3位という好成績を収めました。2019年にはタイヤをリンロンタイヤに変更すると同時に、マシンのカラーリングもチームカラーであるオレンジを基調としたものから白を基調としたデザインへと変更されました。また、この年からD1GPと並行してフォーミュラ・ドリフト ジャパン（FDJ）への参戦を開始。Team Kazama With PowervehiclesよりS15シルビアを駆りました。翌2020年のD1GP第5戦オートポリスでは追走決勝まで進出し、同じ九州出身の植尾勝浩選手と対戦しましたが敗れ、準優勝となりました。

2021年には、新型コロナウイルスの影響で日程が変更されたエビスサーキット南コースでの最終開催となったD1GP第5戦で、9年ぶりとなる自身3度目のD1GP優勝を飾りました。また、FDJにも2019年と同じチームから参戦を続け、準優勝2回を含む好成績を収め、シリーズ総合5位となりました。

2022年からは、活動の場をフォーミュラ・ドリフト ジャパン（FDJ）に一本化。ATLAS TIRE DRIFT Team Fukushimaに加入し、日産・フェアレディZ（Z34）で参戦を開始しました。第2戦のエビスサーキットでFDJ初優勝を達成し、この年のシリーズランキングは9位でした。2023年も同チームから引き続きFDJに参戦。マシンを最新型のRZ34フェアレディZにスイッチします。そして第4戦SUGOでは、自身の47歳の誕生日を勝利で飾り、FDJ通算2勝目を挙げました。

プライベートでは、2005年のD1GPお台場戦で、D1史上初となる実弟・正雄選手との兄弟対決が実現しています。これまでに公式戦で計9度の対決があり、2021年シーズン終了時点で直登選手が4勝、正雄選手が5勝と拮抗した戦績を残しています。また、2005年のD1GP最終戦筑波では、予選前夜に車両盗難に見舞われるというアクシデントがありましたが、友人の日産・180SXを借りて出場を試みたものの、予選落ちという結果に終わっています。

エビスサーキットへの転職直後の2007年には、同サーキットで行われたビデオオプション企画「目隠しラジコンレースリターンズ」に、スタッフとして勤務中に「無理矢理」参加させられたというエピソードも残されています。チーム紹介に名前が記載されていたことから、実際には出場は当初から予定されていたものと思われます。

2024年1月末をもってエビスサーキットを退職したことを、同年3月31日に自身のソーシャルネットワーキングサービスで公表しました。

末永直登選手は、長年のキャリアを通じて様々なマシン、シリーズ、そして環境の変化に適応しながら、常にトップレベルで戦い続けている、日本のドリフトシーンを代表するドライバーの一人です。

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