本光院 (足利直義の妻)

本光院: 足利直義の妻と彼女の生涯について

本光院（ほんこういん）は、室町幕府初期において重要な役割を果たした足利直義の妻であり、従三位の地位を持つ女性です。彼女は直義との間に足利如意丸という子供をもうけ、母としての顔も持ちながら、政治的な背景とも深く関わっていました。本光院の実家には渋川氏があり、父は渋川貞頼、その兄弟には渋川義季がいます。彼女はまた、室町幕府第2代将軍足利義詮の正室、渋川幸子の叔母でもあります。

生い立ちと家族

本光院は貞頼の娘として生まれ、彼女の正確な名前は不明ですが、江戸時代末期の資料には「渋川頼子」という名が見つかります。彼女の兄弟である渋川義季は、渋川氏の4代目当主であり、戦乱の中で命を落としました。

息子の誕生

1347年6月8日、京都の吉良満義の宿所で足利如意丸（通称：如意王）を出産した本光院は、当時41歳であり、夫の直義も同じ年齢でした。直義は出産を迎えるにあたって水無瀬神宮に安産祈祷を行ったとされています。彼女の年齢に関する記録は異なり、中院通冬の日記では42歳と記されています。

日野名子との文学的交流

彼女は1349年に書かれた日野名子の『竹むきが記』に登場し、そこでの公的な贈答の和歌を通じて、当時の社交や文化生活を垣間見ることができます。この交流は、彼女がただの内助の妻にとどまらず、文学や詩にも関心を持っていたことを示しています。

和歌の内容は、相手の深い思いやりに対する感謝の気持ちや、色彩に例えられた美しい景色が表現されています。贈られた紅葉に関する描写は、彼女の心の豊かさを示すもので、当時の文化交流の一端を担っていました。

赤塚郷の継承と生涯の終焉

1350年から1352年にかけて起こった観応の擾乱では、夫の直義と息子の如意王を失った本光院は、赤塚郷を継承します。この地域は彼女の生活基盤となり、直義が亡くなった後は法体となり彼の菩提を祈る生活を送りました。『板橋区史』では、彼女が直義の遺領を生活費として使用した可能性があるとされています。

本光院の死没日に関する記録は不明ですが、1383年2月29日に渋川幸子が赤塚郷の年貢を鹿王院に寄進した際の文書から、彼女がこの年までには亡くなったものと考えられています。

無説尼との関係

本光院の開基とされる無説尼は、足利直義の妻としての彼女の伝統を受け継いだ人物です。無説尼の出家動機に関する説があり、直義の暗殺に影響を受けたというのもその一つです。彼女の存在は本光院門跡に今なお伝えられており、彼女らの信仰心は当時の文化や社会と密接に関わっていました。

関連作品

本光院は多くの文献や小説に登場し、彼女の生き様や家族との関係が描かれています。鷲尾雨工の『吉野朝太平記』や杉本苑子の『風の群像 小説・足利尊氏』では、彼女の名は登場しないものの、立ち位置や感情が描かれています。また、テレビドラマ『太平記』でも彼女の役割が重要視されています。

本光院の生涯は、彼女がただの女性にとどまらず、当時の政治や文化において重要な草分けであったことを示しています。彼女の影響は、後世においても語り継がれるべき大切な歴史の一部です。

もう一度検索