日野名子

日野名子

日野名子（ひの めいし、延慶2年（1310年）? - 延文3年2月23日（1358年4月10日））は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての女性です。光厳天皇の典侍として宮廷に仕え、後には『竹むきが記』という日記を著しました。別名として「資子」とも呼ばれ、「竹むき」という通称でも知られています。父は日野資名で、夫は西園寺公宗です。

生涯

日野名子は日野資名の娘として生まれました。母は正室である日野頼宣の娘と考えられています。詳しい時期は不明ですが、初めは後伏見院に女房として仕えました。元弘元年（1331年）に光厳天皇が即位すると、典侍に任じられ、翌年には光厳天皇即位の褰帳典侍を務め、従三位に叙せられました。

その後、西園寺公宗と結婚しましたが、建武2年（1335年）に夫が建武政権への謀反を企てたとして処刑されるという不幸に見舞われます。しかし、この事件やその前後の出来事については、彼女の日記『竹むきが記』には記録されていません。その後、長男である西園寺実俊を出産し、暦応3年（1340年）には北山第へ移り住みました。石山寺、賀茂神社、石清水八幡宮、春日大社、初瀬寺など各地への参拝を重ね、その様子を『竹むきが記』に詳細に記録しました。

貞和3年（1347年）には、長年の宿願であった十一面観音像を造立し、西園寺内の持仏堂である三身堂で供養を行いました。延文3年（1358年）2月23日に亡くなりました。

日記『竹むきが記』

『竹むきが記』は、日野名子によって書かれた日記であり、元徳元年（1329年）12月28日の春宮元服の記述から始まり、貞和5年（1349年）の光厳院・後光厳院の北山第御幸や、同年の花見の記事までが記録されています。日記の最後には、全篇を締めくくる跋歌二首が置かれています。

内容は多岐にわたり、宮廷行事の記録、物詣や仏事の様子、夫との交流、子供の成長記録などが詳細に記されています。五條小枝子は、その著書『竹むきが記 研究』の中で、この日記が「記録することを強く意識して書かれている」と指摘しています。また、日記に挿入されている詠歌には京極派の和歌が目立つことから、名子の教養の基盤が同派の和歌によって形成されたと考察しています。

康永から貞和年間にかけては、名子自身の仏道修行への志向も垣間見えます。岩佐美代子は、『竹むきが記 全注釈』の解題において、名子の信仰告白について「著しく理性的、自省的」と評しています。

参考文献

五條, 小枝子『竹むきが記 研究』笠間書院、2004年5月1日。ISBN 978-4-305-10353-6。
岩佐, 美代子『竹むきが記 全注釈』笠間書院、2011年2月1日。ISBN 978-4-305-70531-0。

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