本因坊秀哉

本因坊秀哉とは

本因坊秀哉（ほんいんぼう しゅうさい、1874年6月24日 - 1940年1月18日）は、明治から昭和にかけて活躍した囲碁棋士です。本因坊家二十一世であり、終身名人制の最後の名人として知られています。東京出身で、本名は田村保寿（たむら やすひさ）です。その生涯は、激動の時代とともに、囲碁界の発展に大きく貢献しました。

修行時代

秀哉は、10歳で囲碁を始め、11歳で方円社に入塾し、村瀬秀甫に師事しました。方円社では、石井千治、杉岡榮治郎とともに「三小僧」と呼ばれました。その後、中川亀三郎に師事し、1891年に方円社を脱退しますが、翌年には本因坊秀栄門下に入門し、四段を許されました。秀栄は他の棋士を先二以下に打ち込む実力者でしたが、秀哉は唯一先を保ち、後継者候補として見られていました。しかし、秀栄は秀哉の性格を嫌い、雁金準一を後継者に望んでいました。

本因坊、名人襲位

1907年、秀栄が後継者を決めないまま亡くなると、本因坊家は後継者争いで二分します。最終的に、秀元が一旦二十世本因坊となり、その後秀哉に本因坊位を譲ることで決着しました。1908年、秀哉は34歳で二十一世本因坊秀哉となりました。1914年には名人にも推挙され、名実ともに棋界の第一人者となりました。この頃には、鈴木為次郎や瀬越憲作といったライバルも現れましたが、秀哉は彼らとの対局でも圧倒的な強さを見せつけました。

日本棋院総帥として

大正時代初期の囲碁界は、本因坊門、方円社、裨聖会の三派に分かれていました。しかし、合同の機運が高まり、1924年に日本棋院が設立されました。秀哉は棋院の最上位者として、棋戦に出場しました。しかし、雁金準一らは日本棋院を脱退し、棋正社を設立します。両者は読売新聞の仲介により、大規模な対抗戦を行い、秀哉は雁金との主将決戦に勝利しました。その後、呉清源との対戦では、斬新な布石に苦戦するも、最終的には勝利しました。1936年、秀哉は本因坊の名跡を日本棋院に譲渡し、選手権制の本因坊戦創設を導きました。

引退と最期

1938年、秀哉は木谷実との引退碁を打ち、現役を引退しました。1940年1月18日、熱海の旅館で急逝しました。秀哉の死後、日本棋院は、その功績を称え、最優秀棋士に秀哉賞を贈ることを決定しました。秀哉は、数々の名勝負を繰り広げ、囲碁界に大きな足跡を残しました。また、その生き様は川端康成の小説『名人』で描かれています。

代表局

院社対抗戦

1926年、日本棋院と棋正社の対抗戦での雁金準一との対局は、大乱戦となり、観客を沸かせました。秀哉は、雁金の黒石を強引に取りに行き、激しいねじり合いの末に勝利しました。

呉清源との勝負碁

1933年、呉清源との対局は、新旧の勢力対決として注目を集めました。呉は三々打ちや天元打ちといった斬新な布石を披露しましたが、秀哉は妙手を放ち、2目勝ちを収めました。しかし、この妙手は秀哉の弟子である前田陳爾が考案したという説もあります。

引退碁

1938年、木谷実との引退碁は、史上最長の持ち時間40時間で行われました。結果は木谷の5目勝ちとなりましたが、この対局は川端康成によって小説『名人』に描かれ、秀哉の晩年を語る上で欠かせないものとなっています。

死活妙機

1910年に出版された「新案詰碁 死活妙機」は、実戦を基礎とした詰碁集であり、その難解さで知られています。前田陳爾は、この詰碁集を「詰碁名作ベストテン」の6位に位置づけています。

その他

秀哉は、囲碁界の発展に尽力する一方で、多くの弟子を育てました。その弟子の中には、鹿間千代治、宮坂宷二、蒲原繁治らがいます。また、藤沢朋斎や安永一も秀哉から薫陶を受けました。

まとめ

本因坊秀哉は、その生涯を通じて、囲碁界に大きな功績を残しました。その棋風は力強く、数々の名勝負を繰り広げました。引退後は、本因坊の名跡を日本棋院に譲渡し、選手権制の本因坊戦創設に貢献しました。秀哉の功績は、現代の囲碁界にも大きな影響を与えています。

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