本宮町 (和歌山県)

本宮町（ほんぐうちょう）

本宮町は、和歌山県南部に位置していた町で、東牟婁郡に属していました。2005年 5月1日に、田辺市、龍神村、中辺路町、大塔村との合併により、新たな田辺市の一部となり、その歴史を閉じました。

概要

本宮町は、熊野本宮大社の神明町として古くから栄え、修験道や権現信仰の聖地として知られています。現在では、林業と観光が主な産業となっています。2000年の国勢調査では、人口は3,869人、面積は204.06平方キロメートルでした。熊野本宮大社や熊野参詣道、熊野九十九王子跡は、ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されており、歴史的にも重要な地域です。奈良県十津川村との県境に位置し、大和国や伊勢国からの参拝路の終点でもありました。

地理

紀伊半島の山中に位置し、紀伊山地の標高250メートル以上の場所にあります。集落は250メートルから350メートル付近に多く見られます。北に果無山脈、南に大塔山系という二つの1000メートル級の山脈に囲まれ、寒暖差が激しい地域です。熊野川が町の北東部から南東部を流れ、多くの滝を形成しています。湯の峰温泉、川湯温泉、渡瀬温泉といった温泉地があり、熊野本宮温泉郷として国民保養[[温泉地]]に指定されています。町内最高地点は、標高1,122メートルの大塔山です。

歴史

本宮は、熊野本宮大社に奉仕し、参詣者に宿を提供する神明町として発展しました。町の中心集落である本宮の地名も、熊野本宮大社に由来します。

古代

『熊野年代記』によると、熊野本宮大社は崇神天皇の頃に成立したとされていますが、確かな記録は766年のものです。当初、本宮は熊野川、音無川、岩田川の合流地点の中州（大斎原）にありました。当初は地方の神社でしたが、醍醐天皇の頃から朝廷の尊崇を受け、宇多法皇の行幸や延喜式への記載など、次第に重要な扱いを受けるようになりました。

平安時代

朝廷の尊崇により、本宮の町は大社とともに発展しました。熊野参詣道には九十九王子と呼ばれる神社群があり、参詣者は道中の安全を祈願しました。本宮町内には、発心門王子や伏拝王子などが存在します。院政期には、皇族や貴族の熊野御幸が頻繁に行われました。平安中期から熊野三山（本宮、新宮、那智）は熊野別当が管轄するようになり、本宮は熊野御幸の要として繁栄しました。しかし、承久の乱で上皇方が敗れると、熊野への行幸は減少し、参詣者の中心は東国の武士や有力農民に移りました。熊野信仰は阿弥陀如来と結びつき、熊野誓紙の習慣も生まれました。

戦国時代から江戸時代

室[[町時代]]後期には、堀内氏に勢力を奪われ、その堀内氏も関ヶ原の戦いで敗れたため、領地を没収されました。浅野長政が紀州和歌山に封じられると、本宮はその領地に入り、社領が寄進されました。紀州藩領となってからは、領主直轄領と新宮藩領に分割されました。

明治時代以後

廃藩置県により、本藩領は和歌山県、新宮領は新宮県となり、後に和歌山県に統合されました。1889年の洪水で熊野本宮大社が被災し、現在の場所に移転しました。1890年に町村制が施行され、三里村、本宮村、四村、請川村、敷屋村が設置され、1956年に合併して本宮町となりました。その後、田辺市を中心とする合併協議会に参加し、2005年に田辺市、龍神村、中辺路町、大塔村との対等合併により、本宮町は廃止されました。

沿革

1956年 9月30日：三里村、本宮村、四村、請川村、敷屋村の一部が合併し、本宮町が発足。
2005年 5月1日：田辺市、龍神村、中辺路町、大塔村と合併し、新たな田辺市が発足。本宮町は廃止。

行政

本宮町役場は本宮219にあり、町長は泉正徳でした。周辺自治体は、中辺路町、大塔村、古座川町、熊野川町、十津川村でした。広域市町村圏事務組合や田辺広域合併協議会に参加し、合併協議を経て田辺市となりました。

人口動向

山間部に位置するため、過疎化と高齢化が進んでいます。2000年の国勢調査では、総人口3,869人で、高齢者人口の割合が高い状況でした。

産業

観光業、林業、農業が主な産業です。森林面積が広く、林業従事者の割合も高いですが、近年は観光開発に力を入れています。熊野本宮大社と豊かな森林、温泉を活かした観光振興が図られています。ユネスコ世界遺産への登録も観光客増加に貢献しています。

友好都市

大阪府堺市と友好都市提携をしていましたが、合併により解消されました。

教育機関

合併直前には、小学校4校、中学校2校がありました。現在はいずれも田辺市立となっています。

文化財・記念物・史跡

熊野本宮大社とその関連文化財、史跡が多く、「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界遺産に登録されています。また、ユノミネシダ自生地が天然記念物に指定されています。大瀬の太鼓踊は国選択無形民俗文化財に指定されています。

交通

鉄道は通っておらず、道路交通に依存しています。JR紀伊田辺駅や新宮駅、近鉄大和八木駅からバスが利用できます。国道168号と311号が通り、熊野参詣道の一部も含まれています。

その他

町内には、耕作放棄された水田が湿地帯となった「ふけ田」がありましたが、近年、整備事業により生物相が失われたという批判もあります。