本尊 (日蓮正宗)

日蓮正宗の本尊について

概要

日蓮正宗では、本尊として日蓮が書写した曼荼羅が重要視されています。この曼荼羅は「字曼荼羅」「十界曼荼羅」「御本尊」とも呼ばれ、根元にあたるのは「本門戒壇の大御本尊」であるとされています。他の本尊は、あたかも木の幹に対する枝葉のような存在と位置づけられています。

本尊の中心には「南無妙法蓮華経」と日蓮の名前が独特の筆致で縦書きされています。周囲には四天王が描かれ、さらに南無妙法蓮華経の左右には釈迦牟尼仏や多宝如来、四菩薩、神々、さらには地獄界に位置する提婆達多の名も見られ、これは十界の衆生を象徴しています。これによって、文字を通じた「事の一念三千」という思想が表現されるのです。

この本尊の形は弘安の頃から徐々に発展し、1280年に確立されました。日蓮教の根本思想である「十界互具」「百界千如」という理念が文字に顕現され、日蓮が言ったように、この本尊は「日蓮自身の生命を顕す体」であるとされています。

本尊の安置と信仰

日蓮正宗の信者や各寺院には、日蓮によって書写された本尊や、歴代法主の書写による本尊が安置されています。本尊参拝は「生身の日蓮にお仕えする心」を持って行うべきとされ、この本尊は末法における本仏であり、日蓮そのものの至高の悟りを反映しています。この本尊への勤行によって、信者は成仏の境地に到達できると言われています。

歴代法主の特徴

歴代の法主は、本尊に「南無妙法蓮華経」と書いた直下に日蓮の判形を加え、その左下に法主名や花押を添えています。また、日蓮の本尊には賞罰の内容については記されておらず、歴代法主が書写する際には、謹んでこれを記載することが特徴的です。

本尊の形式

本尊には「紙幅本尊」と「板本尊」という2つの形式があります。紙幅本尊は掛軸の状態に仕立てられ、法主の直筆によるものや印刷された形木本尊に分類されます。特に寺院が所有するものは常住本尊とされ、葬儀の際には導師本尊も同様です。信徒の宅には形木本尊が貸し出されることもあり、特別な条件で常住本尊が授与されることもあります。

板本尊は、特に日興流による常住本尊として位置づけられており、総本山やの法堂に安置されています。板には金箔が施され、黒漆されたもので、本尊の周囲には金色の枠が巧みに施されています。

大御本尊と導師本尊

大石寺に所蔵される本門戒壇の大御本尊は、日蓮が自身の本懐として書いたものであり、広宣流布に際して全日本国民が帰依すべき原点とされています。しかし、その成立については議論が続いており、他の流派からは後世の偽作とみなされることもあります。

導師本尊は、葬儀時などに故人を霊山浄土へ導くために使用され、即身成仏を目指す本尊です。各寺院の納骨堂にはこの本尊が安置されており、信仰の重要な一環を成しています。

紫宸殿御本尊

紫宸殿御本尊は、富士大石寺と京都要法寺に存在しますが、それぞれ異なる本尊とされています。大石寺のものは日蓮の真筆とされ、特に天皇に奉上されるための本尊だったとも言われ、要法寺のものは日蓮の手によるものではないとされています。

安置形式と仏壇

本尊の通常の安置形式は本尊だけを安置する方法ですが、特定の寺院では日蓮の像を前に置く形式や、日興の像と共に安置する方法が採られています。仏壇のデザインも他宗派とは異なり、内部に厨子が付いている特殊なものとされ、仏前に置かれる位牌も様々な意味合いを持っています。

日蓮正宗の本尊は、信者の信仰の根本に位置し、その形態や形式は深い意義を持っています。特に、信者が本尊に礼を尽くす姿勢は、日蓮の教えを生かす上で欠かせない要素となっています。

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