本山寺 (三豊市)

本山寺：歴史と文化が息づく香川の名刹

香川県三豊市に位置する本山寺は、高野山真言宗に属する由緒ある寺院です。四国八十八箇所霊場第70番札所、四国三十六不動霊場第29番札所と、巡礼者にとって重要な寺院でもあります。正式名称は七宝山持宝院、本尊は秘仏の馬頭観音菩薩です。

歴史と伝説：弘法大師から現代まで

寺伝によれば、本山寺は弘法大師空海によって大同2年（807年）に創建されました。平城天皇の勅願寺として建立され、当初は長福寺と呼ばれていたと伝えられています。本尊の馬頭観音菩薩像は空海自身の手によるものとされ、一夜で本堂が完成したという伝説も残されています。

中世には2000石の寺領を有し、24坊を擁する大寺院として栄えました。永安から天正年間（1573～1593）の戦乱で多くの寺院が焼失する中、本山寺は香川氏の庇護下にあり、長宗我部氏との婚姻同盟によって「不戦協定」が結ばれていたため、兵火を免れたと伝えられています。発掘調査でも焼失の痕跡は見つかっていません。しかし、本堂内陣に攻め込んだ兵士が、阿弥陀如来像から血が流れ落ちるのを目撃して撤退したという、興味深い逸話も残されています。

江戸時代には領主の生駒氏、京極氏によって再興され、天保年間（1830～1844）には地名から本山寺と改称されました。明治時代には五重塔が建立され、現在も多くの参拝者を迎えています。近年では五重塔の修理や本尊の修復なども行われ、寺院の維持・保存に力を入れています。

伽藍と文化財：国宝本堂をはじめとする数々の宝

本山寺には、多くの歴史的建造物や仏像などの文化財が残されています。その中でも最も有名なのが、鎌倉時代に再建された国宝の本堂です。正安2年（1300年）の建立と推定され、禅宗様と和様を融合させた独特の建築様式が特徴です。本堂内には秘仏の本尊馬頭観音菩薩をはじめ、薬師如来、阿弥陀如来などが安置されています。

その他にも、重要文化財に指定されている二王門や、香川県指定有形文化財の鎮守堂、木造善女龍王像、五輪塔など、数多くの貴重な文化財が境内には存在します。国の登録有形文化財にも指定されている大師堂、十王堂、大日堂、宝蔵、鐘楼、大門、冠木門なども、それぞれに歴史的価値の高い建造物です。

2014年には、本尊馬頭観音と同じ大きさの馬頭観音像が公開され話題を呼びました。これは、善通寺金堂本尊を造った仏師・北川運長が本山寺で製作したと伝えられるものです。

周辺の番外霊場：歴史と自然の散策

本山寺の周辺には、枯れ木地蔵堂、興隆寺遺跡の石塔群、砥石観音、不動の滝、生目神社など、いくつかの番外霊場が存在します。これらの霊場は、それぞれ独自の伝説や歴史を持ち、本山寺を訪れた際には合わせて巡拝するのも良いでしょう。

アクセスと情報

本山寺へのアクセスは、JR四国予讃線本山駅から徒歩約1.2km、または高松自動車道さぬき豊中ICから車で約2.2kmです。駐車場は仁王門前に無料駐車場が完備されています。宿坊はないため、近隣の宿泊施設を利用する必要があります。

本山寺は、歴史的建造物、貴重な仏像、そして周辺の自然と歴史を満喫できる、魅力あふれる寺院です。四国遍路の旅はもちろん、歴史や文化に興味のある方にもおすすめです。

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