善通寺

善通寺：弘法大師ゆかりの古刹

香川県善通寺市に鎮座する善通寺は、真言宗善通寺派の総本山であり、四国八十八箇所霊場の第75番札所として知られています。別名、屏風浦五岳山誕生院とも呼ばれ、本尊は薬師如来です。高野山、東寺と並ぶ弘法大師三大霊場の一つに数えられ、その歴史と文化遺産の豊かさから、多くの巡礼者や観光客を魅了しています。

歴史：空海と佐伯氏の氏寺

善通寺の創建は、平安時代初期の807年（大同2年）に遡ります。真言宗開祖である空海の父、佐伯田公（さえきのたぎみ）が、土地を寄進して建立に着手し、813年（弘仁4年）に落成したと伝えられています。空海が唐で師事した恵果が住んでいた長安の青龍寺を模して造営されたとされ、創建当初は金堂、大塔、講堂など15もの堂宇を有する壮大な寺院であったと言われています。寺号の善通寺は、佐伯田公の諱である善通（よしみち）に由来し、山号の五岳山は、寺の周囲に位置する5つの山の名称からつけられました。

歴史文献上では、『東寺百合文書』に収められた寛仁2年（1018年）の文書に「讃岐国善通寺司解」として初めて登場します。この文書では、善通寺が東寺の末寺として記載されており、空海の先祖による創建という伝承が古くからあったことが分かります。発掘調査からは、白鳳から奈良時代の古瓦が出土しており、当初は佐伯一族の氏寺として創建された可能性も指摘されています。

鎌倉時代に入ると、天皇や上皇からの庇護や荘園の寄進を受け、本格的な興隆期を迎えます。これは平安後期に隆盛した弘法大師信仰、特に善通寺に伝わる空海の自筆とされる「瞬目大師像」への崇敬が背景にあります。建長元年（1249年）には誕生院が建立され、現在の東院（伽藍）と西院（誕生院）の二院体制が確立しました。その後も、室町時代には足利氏の庇護を受け、自律的な経営を目指しました。

戦国時代の兵火による焼失や、近世における高松松平家、丸亀京極家の庇護など、幾多の変遷を経て現在に至ります。近世の史料は少ないものの、絵図類から、金堂や五重塔の再建、西院の御影堂を中心とした参詣空間の整備などが行われ、19世紀前半には現在の伽藍の姿がほぼ完成していたことが窺えます。明治時代には陸軍基地が置かれ、軍都として発展した歴史も持ちます。江戸時代までは、東院と西院は別々の寺院でしたが、明治初期に単一の寺院となりました。昭和6年（1931年）には大本山に昇格し、真言宗善通寺派を創設、昭和16年（1941年）には総本山に昇格しました。

境内：東院と西院

善通寺の境内は、空海の生誕地と伝わる西院（誕生院）と、創建地である東院（伽藍）の二つの主要なエリアに分かれています。

東院（伽藍）には、南大門、金堂、五重塔、釈迦堂、鐘楼、赤門など、多くの建造物が立ち並びます。中でも、金堂の本尊薬師如来坐像や、1902年完成の五重塔は圧巻です。また、五百羅漢や、さまざまな石仏、社殿なども点在し、歴史を感じさせる空間が広がっています。

西院（誕生院）は、空海の生誕地と伝えられており、御影堂（大師堂）、産湯井戸など、空海にゆかりのある建造物や場所があります。御影堂には秘仏である「瞬目大師像」が安置されています。また、西院には「戒壇めぐり」や宝物館など、見どころも満載です。さらに、五百羅漢、護摩堂、閻魔堂、親鸞堂など、多くの堂宇が立ち並びます。

文化財：国宝、重要文化財など

善通寺には、数多くの文化財が保存されています。国宝には「金銅錫杖頭」、「一字一仏法華経序品」があり、重要文化財には「金堂」、「五重塔」、「木造地蔵[[菩薩]]立像」、「木造吉祥天立像」、「善通寺伽藍並寺領絵図」など、多くの建造物や仏像が指定されています。その他にも、国の史跡、国の登録有形文化財、県指定文化財など、数多くの文化財が善通寺の価値を高めています。

アクセスと周辺

善通寺へのアクセスは、JR土讃線善通寺駅、または高松自動車道善通寺ICからが便利です。周辺には、犬塚、赤門七仏薬師、香色山など、見どころも多くあります。

まとめ

善通寺は、その歴史、文化、そして弘法大師空海との深い繋がりから、多くの人々を惹きつけてやまない霊場です。広大な境内を巡り、歴史と文化に触れ、静寂の中で安らぎのひとときを過ごすことができます。

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