本間北曜

本間北曜（ほんま ほくよう）

本間北曜（文政5年〈1822年〉 - 慶応4年7月19日〈1868年9月5日〉）は、江戸時代後期の蘭学者、浮世絵師として知られています。葛飾北斎晩年の門人であり、激動の時代を生きた人物です。

生涯

出羽国（現在の山形県）酒田の廻船問屋、本間家の分家筋に生まれました。幼名は規矩治（きくじ）。幼少の頃から学問を好み、藩医から四書五経を学び漢籍に親しみました。

21歳の時、放蕩を諌められたことをきっかけに江戸へ出て蘭学を学び始めます。坪井信道、平野元慶に師事し蘭学を修めました。その後、葛飾北斎に入門し、北曜と号しました。北斎にとっては晩年の弟子の一人です。また、根付師の初代山口友親に彫刻を学んだ時期もありました。

5年ほど江戸に滞在した後、同郷の清河八郎の影響からか、次第に国事に興味を持つようになります。ジョン万次郎、榎本武揚らと交流し、海外事情に触れる中で、日本の将来に危機感を抱くようになります。

嘉永元年（1848年）には長崎へ旅行し、その様子を詳細な日記『羽州飽海大泉荘北曜 西肥長崎行日記』に記録しました。日記には、長崎で頴川藤三郎らに会ったことや、北斎から魚の写生を依頼されたことなどが記されています。

嘉永6年（1853年）にはペリー来航の際に「黒船図」を描きました。自ら浦賀へ赴き写生した様子が書き込まれています。安政2年（1855年）には勝海舟に誘われ、大坂の勝塾で蘭学講師を務めました。長崎海軍伝習所では通訳としてオランダ人宣教師フルベッキから英語を学んでいます。

文久2年（1862年）には欧米各国を外遊し、西洋諸国の経済発展と東洋への経済侵略を目の当たりにしました。この経験から、日本の独立と経済発展のためには株式会社を創設し、巨大産業を興す必要があると考えるようになります。

帰国後、薩摩藩家老の小松清廉に英語教師として推薦され、鹿児島開成所の英語教師に就任します。西郷隆盛らと交流し、「薩州商社草案」という定款を作成、小松清廉に上書しました。この草案は、日本で最初に株式会社を考えた人物であることを示唆する貴重な資料となっています。

慶応3年（1867年）、「薩州商社」への参加を求めに酒田へ帰郷しますが、戊辰戦争直前の庄内藩は佐幕派が優勢であり、薩摩藩との繋がりを疑われ幽閉されてしまいます。

慶応4年（1868年）7月19日、幽閉先で急死しました。毒殺説も囁かれています。享年47歳。墓所は酒田市の浄福寺にあります。

業績

絵師としての活動は多くありませんが、師である北斎との交流は深く、北斎が最晩年に描いた「鬼図」を贈られています。また、「北曜手控帖」という画稿集が残されており、その画技の高さが窺えます。本間北曜は、蘭学者、浮世絵師としてだけでなく、日本の経済発展を夢見た先駆者として記憶されるべき人物です。

参考資料

本間恒輔　「画狂老人北斎と郡兵衛」　『方寸』第5号　酒田古文書同好会、1974年
日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年
『北斎展　HOKUSAI』　東京国立博物館・日本経済新聞社、2005年
『北斎一門肉筆画傑作選　―北斎DNAのゆくえ―』　板橋区立美術館、2008年
* 郷土の先人・先覚44 本間郡兵衛（荘内日報）

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