札幌事件

札幌事件：北海道を揺るがした暴力団抗争と早期和解

1990年1月4日、北海道札幌市中央区の北海道神宮付近で、五代目山口組系初代誠友会の石間春夫会長が、共政会系の右翼団体「維新天誅会」の会員2名によって射殺されるという衝撃的な事件が発生しました。これは、暴力団抗争が激化の一途をたどっていた時期の出来事であり、社会に大きな衝撃を与えました。

事件後、事態を重く見た共政会側は、速やかに事件に関与した維新天誅会系の「稲田組」（札幌に拠点を置く）組長を絶縁処分としました。さらに、その上部団体にあたる「島上組」（広島）の組長も破門処分とするという厳しい措置を取りました。これは、事件の責任を明確にし、事態の収拾を図るための迅速な対応でした。

山口組の直系組長（二次団体首領）が射殺されるという事態は、過去には竹中正久らが射殺された「1・26事件」を除けば前代未聞であり、その影響は計り知れませんでした。一部のマスメディアは、この事件を山口組と共政会との“全面戦争”（大規模な抗争）に発展する可能性を示唆するかのような報道を行いました。社会全体が緊張感に包まれる中、事態は予断を許さない状況となりました。

しかし、意外なことに、事件発生からわずか2ヶ月後には和解が成立しました。この早期の和解は、田岡三代目時代の武闘路線とは異なる、山口組の「平和路線」を象徴する出来事として、後世に評価されることとなりました。暴力団同士の抗争事件でありながら、早期に和解が成立した背景には、様々な要因があったと考えられます。

もっとも、和解が成立するまでの間には、様々な事件が発生しています。島上組組員が銃撃を受けて重傷を負う事件が広島で発生したほか、札幌では稲田組事務所にパワーショベルが突入する事件や、稲田組幹部が狙撃される事件など、山口組側による報復と見られる事件が相次いで発生しました。これらの事件は、和解交渉の過程における緊張感や、関係者たちの複雑な思惑を物語っています。

札幌事件は、暴力団抗争の激化と、その後の早期和解という、二つの側面を持つ事件でした。この事件は、当時の社会情勢や暴力団組織の内部事情を反映しており、現代社会においても様々な教訓を与えてくれます。

参考文献：
山平重樹『北海道水滸伝』双葉社＜双葉文庫＞、1999年、ISBN 4-575-50698-2
実話時代編集部『山口組若頭』洋泉社、2007年、ISBN 978-4-86248-108-5
* 溝口敦『山口組ドキュメント　五代目山口組』三一書房、1990年、ISBN 4-380-90223-4

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