朱能

朱能（しゅ のう）：明初の勇将、その生涯と功績

朱能（1370年 - 1406年）は、明代初期に活躍した将軍です。字は士弘といい、濠州懐遠県（現在の安徽省）の出身です。父は洪武帝に仕え、数々の武功を立てた朱亮であり、その父の跡を継ぎ、朱能もまた武将としての道を歩みました。子に朱勇がいます。

燕王朱棣への忠誠

父の死後、朱能は燕王に封じられた朱棣（後の永楽帝）に仕え、その軍事力の一翼を担うようになりました。洪武帝の崩御後、建文帝が即位すると、その帝位をめぐり「靖難の変」が勃発しました。朱能はこの戦いで、張玉らと共に、建文帝軍の李景隆や耿炳文らを破るという目覚ましい活躍を見せます。

1400年（建文2年）の東昌の戦いでは、共に戦った将軍・張玉が戦死するという大きな転換点を迎えます。張玉を失った朱棣軍は、数で勝る建文帝軍に圧倒され、一時的に劣勢に立たされます。諸将の中には講和を唱える者も出始めましたが、朱能は「かつて漢の劉邦は項羽に何度も敗北を喫したが、一度の勝利で天下を取ったではないか」と、劉邦の故事を引き合いに出し、将兵たちを鼓舞しました。この朱能の言葉は、朱棣軍の士気を再び高めることに成功し、軍を立て直す大きな要因となりました。

朱能の鼓舞に応えるように、朱棣軍は建文帝軍の盛庸・平安率いる大軍を破り、1402年（建文4年）には南京を陥落させるに至ります。この勝利により、朱棣は永楽帝として即位し、明朝の新たな時代が幕を開けました。

永楽帝の信頼と晩年

永楽帝の即位後、朱能は存命の功臣の中でも丘福に次ぐ地位を与えられ、特進栄禄大夫・成国公という高位を授与されました。永楽帝からの信頼は非常に厚く、朱能はその期待に応え、明朝の発展に尽力しました。

しかし、1406年（永楽4年）、永楽帝の命令により、ベトナム胡朝の胡季犛討伐のため出陣しましたが、その途上、太平（現在の広西チワン族自治区）で病に倒れ、37歳という若さでこの世を去りました。高位にあっても驕ることなく、財産を士卒に分け与えるその人柄は、多くの人々に慕われていました。その早すぎる死に、永楽帝は深く悲しみ慟哭したと伝えられています。

朱能は、明初において重要な役割を果たした将軍であり、その武勇と人望は、後世にまで語り継がれています。

参考文献

* 『明史』巻145 列伝第33

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