杉山神社 (横浜市緑区西八朔町)

杉山神社（横浜市緑区西八朔町）

横浜市緑区西八朔町に位置する杉山神社は、武蔵国六宮として古くから信仰を集める古社です。延喜式神名帳に記される式内社「杉上神社」の有力な論社の一つであり、横浜市北部に多数存在する同名社の中でも重要な一社とされています。武州六大明神の一つとして、東京都府中市の大國魂神社で開催される「くらやみ祭」には六宮として伝統的に参列しています。旧社格は郷社でした。

祭神と神仏習合

主祭神は五十猛命（いたけるのみこと）。配祀神は大日霊貴命、素戔嗚尊、太田命です。中世の『神道集』には「椙山大明神」と称され、本地仏を大聖不動明王としていた記録があります。江戸時代の『新編武蔵風土記稿』にも神体が不動明王立像であったとの記述が見られ、神仏習合の影響が強くうかがえます。近代には、1910年（明治43年）に近隣四社を合祀しました。

歴史

神社の起源は不詳ですが、『続日本後紀』に「枌山神社」、『延喜式神名帳』に「杉上神社」（都筑郡唯一の官社）として記されており、当社はこれらの記述との関連が深いとされています。また、大國魂神社の六所明神の一社でもあります。

現在の地への遷座は、江戸時代の延宝年間（1673年～1681年）と考えられており、それ以前は西北約300mの山麓に鎮座していました。江戸時代には「六ノ宮」とも呼ばれ、慶安2年（1649年）には徳川幕府より朱印状と朱印領五石六斗が与えられています。

近代以降、1873年（明治6年）に郷社に列格。1910年（明治43年）に合祀、1920年（大正9年）に神饌幣帛料供進神社に指定され、1953年（昭和28年）に宗教法人として認証されました。現在の社殿は1982年（昭和57年）に改築されたものです。

境内

本殿は流造、拝殿は入母屋造です。境内には「力石」があり、氏子の力比べや、五穀豊穣祈願の大山参拝時の奉納石との伝承があります。摂末社として、萱葺きの覆屋を持つ小祠や稲荷神社があります。

祭事

主な祭事は歳旦祭（1月1日）、例大祭（10月1日）、新嘗祭（11月23日）、大祓（12月22日）です。特に重要なのは、武蔵国六宮として大國魂神社の「くらやみ祭」（5月3日～6日）に毎年参列することです。

式内社論争について

当社が延喜式神名帳の式内社「杉上神社」であるとする説は幕末に提唱され有力視されていますが、都筑郡周辺に同名の杉山神社が多数存在するため確定していません。他の有力論社も複数存在します。江戸時代の記録では関東四郡に七十数社あり、多くは日本武尊か五十猛命を祀っていたこと、鶴見川水系沿いの高台に鎮座する社が多いことなどが共通点として挙げられます。

現地情報

所在地は神奈川県横浜市緑区西八朔町字宮前208。交通は、JR横浜線「十日市場駅」から徒歩約13分、またはJR横浜線「中山駅」北口より東急バス・横浜市営バス90系統に乗車し、「宮前」バス停下車すぐです。

当社は川崎市麻生区にある琴平神社が兼務管理する兼務社であり、神職は常駐していません。御朱印なども琴平神社にて受けられます。

武蔵国六宮であり、式内社論社として歴史を持つ西八朔杉山神社は、地域の信仰の中心として、また横浜北部における杉山神社群の重要な一社として、その伝統を今に伝えています。

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