杉田 (横浜市)

横浜市磯子区 杉田

杉田は、神奈川県横浜市磯子区の南部に位置する町です。現在の行政地名は杉田一丁目から杉田九丁目までとなっており、全域で住居表示が実施されています。本稿では、かつて1927年（昭和2年）から1988年（昭和63年）まで存在した杉田町、および杉田町から新たに設けられた杉田坪呑についても記述します。

地域概要

杉田は、その区域ごとに異なる様相を見せます。

杉田一丁目
京急本線と磯子産業道路に挟まれたエリアで、国道16号の聖天橋交差点から京急杉田駅方面へ「ぷらむろーど杉田」という商店街が東西に延びています。町内には杉田小学校があります。京急杉田駅に直結する形で、東急ストアなどを核テナントとする再開発ビル「プララ杉田」があります。また、磯子産業道路と国道16号に囲まれた一角には再開発ビル「らびすた新杉田」が建っています。らびすた新杉田の4・5階にある「磯子区民文化センター 杉田劇場」は310席の客席を持ち、1940年代後半に存在し、歌手の美空ひばりが初舞台を踏んだとされる旧「杉田劇場」の名を受け継いでいます。このビルに併設された「ヨコハマ・シーナリータワー」は高さ99.9メートルあり、磯子区内でも有数の高層マンションとして知られています。

杉田二・三丁目
京急本線と笹下釜利谷道路に挟まれた地域で、北は中原、南は杉田坪呑に接しています。二丁目と三丁目の境界には神奈川県道22号横浜伊勢原線（杉田新道）が通り、県道の北側が二丁目、南側が三丁目です。根岸湾と笹下川に挟まれた丘陵地帯に位置し、急な斜面も多く見られます。杉田新道は1913年（大正2年）に着工され、当初はトンネルでしたが、関東大震災で崩壊した後は切通しとなりました。三丁目の西側には浜中学校があります。

杉田四・五丁目
京急本線の東側に広がる住宅街です。五丁目の産業道路よりも東側の埋立地には、かつて杉田ゴルフ場や南横浜自動車学校など、西武グループの施設がありましたが、首都高速湾岸線の用地確保に伴い金沢区福浦へ移転しました。その跡地には首都高速道路に加え、新杉田公園やスポーツセンターが建設されています。海岸沿いにはヨコハママリーナと磯子マリーナの二つのヨットハーバーがあります。五丁目の南側には梅林小学校があり、近くを環状3号線の杉田梅林トンネルが通っています。かつては妙法寺を中心とした「杉田梅林」として賑わい、梅の名所として有名でしたが、宅地化によってその多くが失われました。現在でも梅林小学校や杉田梅林ふれあい公園などにその名残が見られます。

杉田六～九丁目
1965年（昭和40年）頃から開発が進められた新しい住宅地です。南東側は金沢区富岡西に隣接しています。

杉田坪呑

環状3号線沿いに位置し、1985年（昭和60年）頃に杉田台団地が建設された地域です。目の前をJR根岸線が通りますが、新杉田駅、洋光台駅ともに約1.5キロメートル離れており、徒歩約15分の京急杉田駅を利用するか、新杉田駅を発着する路線バスが主な交通手段となります。

歴史

杉田の歴史は古く、紀元前2000年から500年頃には既に貝塚が存在していました。近代に入り、1868年（明治元年）の廃藩置県により神奈川府、後に神奈川県の久良岐郡杉田村となります。1873年（明治6年）には森田学舎（現在の杉田小学校の前身）が開設されました。1889年（明治22年）には周辺の村と合併して久良岐郡屏風浦村の一部となります。1925年（大正14年）には横浜市電が磯子から聖天橋まで開通。1927年（昭和2年）には屏風浦村が横浜市に編入され、横浜市杉田町となり、同年10月には磯子区の一部となりました。

交通網の発達も早く、1930年（昭和5年）には現在の京浜急行電鉄の前身である湘南電気鉄道が開通しましたが、当初は杉田に駅はありませんでした。しかし、翌1931年（昭和6年）には仮駅を経て杉田駅が正式に開業しました。市営バスや京浜急行バスの運行も始まり、地域の交通利便性が向上しました。戦後には浜中学校（1947年）、梅林小学校（1960年）が開校。埋立地には新杉田町が編入され、1970年（昭和45年）にはJR根岸線の開通とともに新杉田駅が開設されました。1974年（昭和49年）には家系ラーメンの元祖とされる「吉村家」が杉田にオープン（後に横浜駅西口に移転、跡地に直系1号店の杉田家がオープン）。1978年（昭和53年）以降、段階的に住居表示が実施され、杉田一丁目から九丁目が誕生しました。そして1988年（昭和63年）、杉田町の残部が杉田坪呑となり、杉田町は消滅しました。平成に入ると、1989年（平成元年）に金沢シーサイドライン新杉田駅が開業し、1993年（平成5年）にプララ杉田、2004年（平成16年）にはらびすた新杉田といった再開発ビルがオープンするなど、駅周辺の整備が進みました。また、環状3号線の一部区間も開通しています。

地価、人口、事業所

住宅地の地価は、2023年（令和5年）1月1日時点の公示地価で、杉田4-8-50地点が1平方メートルあたり22万4000円となっています。

杉田および杉田坪呑の世帯数と人口は、横浜市の発表によれば2023年（令和5年）4月30日現在で、杉田合計では約2.7万世帯、約5.6万人です。杉田坪呑は約900世帯、約1800人です。

2021年（令和3年）の経済センサス調査によると、杉田と杉田坪呑を合わせた事業所数は約1400、従業員数は約12000人となっています。

交通

杉田の交通は、杉田一丁目にある京急本線杉田駅と、新杉田町にあるJR根岸線新杉田駅の利用が中心です。また、新杉田駅からは金沢シーサイドラインも利用できます。バス路線も充実しており、国道16号を経由して横浜駅方面や磯子・追浜方面へ向かう京浜急行バスや、磯子駅から杉田駅を経て内陸部へ向かう市営バス、新杉田駅を発着する市営バスや京浜急行バスなど、地域に応じて多様な路線が利用可能です。

ゆかりのある人物

歌手の美空ひばりは、かつて杉田に存在した旧「杉田劇場」で初舞台を踏んだとされています。

その他

郵便の集配は磯子郵便局が行っており、郵便番号は杉田が一～五丁目が235-0033、六～九丁目が235-0043、杉田坪呑が235-0044です。警察については、町内は磯子警察署の管轄区域となっています。

かつての杉田梅林については、江戸時代の梅見の様子を記した清水浜臣の「杉田日記」が残されています。

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