李原名

李原名（り げんめい、生没年不詳）は、明の初期に活躍した儒学者であり官僚です。字（あざな）は資善（しぜん）といい、本貫は安州です。彼は、その卓越した学識と政治手腕で、洪武帝の信頼を得て、国政の重要な局面で活躍しました。

生涯

1382年（洪武15年）、李原名は、経典に通じた儒学者として推挙され、御史（ぎょし）という監察官の職に就きました。その5年後の1387年（洪武20年）には、平緬（へいめん、現在のミャンマーの一部）への使者として派遣されました。帰国後、彼は思倫発（しりんはつ）の反乱に対する防備強化の必要性と、靖江王（せいこうおう）朱守謙（しゅしゅけん）が権力を濫用している事実を報告しました。これらの報告が洪武帝の意にかなったため、礼部尚書（れいぶしょうしょ）という、礼儀や祭祀を司る重要な役職に抜擢されました。

李原名は、特に遠方の情勢に関する諮問を受けることが多くありました。例えば、高麗（こうらい、現在の朝鮮半島）が、遼東（りょうとう）地方の文州（ぶんしゅう）、高州（こうしゅう）、和州（わしゅう）、定州（ていしゅう）といった地域を、自国の旧領として返還を求めてきました。さらに、鉄嶺（てつれい）に軍を駐屯させることも要求しました。この問題について諮問を受けた李原名は、「遼東の諸州は、かつて元の版図に属しており、遼と高麗の国境は鴨緑江（おうりょくこう）でした。現在、鉄嶺には既に衛（えい、軍事拠点）を設置しており、高麗の要求に応じるべきではありません」と進言しました。

また、安南（あんなん、現在のベトナム）は毎年朝貢していましたが、李原名は洪武帝の意を受けて、これを三年一貢（さんねんいっこう）とする制度を定めました。

答禄与権（とうろくよけん）が、歴代帝王廟（れきだいていおうびょう）を建立することを提議した際には、李原名は風后（ふうこう）、力牧（りきぼく）ら36人の功臣を共に祭祀するように求めました。洪武帝は、その中から趙普（ちょうふ）、安童（あんどう）、アジュを除き、陳平（ちんぺい）、馮異（ふうい）、潘美（はんび）、ムカリを加えて、残りは李原名の意見通りにしました。

魯王（ろおう）朱檀（しゅたん）が亡くなった際には、李原名は喪服に関する制度を定めました。また、進士の王希（おうき）が、父と離縁した実母の喪に服することを願い出た際には、李原名は礼に反するとしてこれを認めませんでした。郊祀（こうし）、宗廟（そうびょう）、社稷（しゃしょく）、岳瀆（がくとく）といった国家の重要な祭祀に関する諸制度は、洪武朝の儒臣たちの議論に基づいて定められましたが、詳細が不十分な箇所があると、洪武帝はすべて李原名に修正させました。

1390年（洪武23年）、李原名は高齢のため、官職を辞して引退しました。

李原名は、明の初期の国家体制の確立に大きく貢献した人物であり、その卓越した知識と判断力は、後の時代にも大きな影響を与えました。

参考文献

* 『明史』巻136 列伝第24

もう一度検索