郊祀

郊祀（こうし）とは

郊祀とは、古代中国において、天子が国の安寧と繁栄を祈願し、天に対して行う重要な祭祀です。天子は都の郊外に祭壇を設け、天を祀りました。特に冬至には天を祀り、夏至には地を祀るのが通例でした。

日本における郊祀

日本でも、中国の郊祀に影響を受けた祭祀が行われました。

桓武天皇による郊祀

最初に行われたのは、桓武天皇が都を長岡京に遷都した後の延暦4年（785年）と6年（787年）です。天皇は、長岡京の南郊にあたる河内国交野郡の柏原（現在の大阪府枚方市）で郊祀を行いました。この地には、祭場の跡とされる小さな円丘が昭和初期まで残っていました。

この郊祀は、中国の様式に倣い、天皇自らが祭文を奏上し、天に国の状況を報告する形式で行われました。桓武天皇が郊祀を行った背景には、以下のような理由があったと考えられています。

中国文化の導入による律令政治の再建
天皇の母方が渡来人系の和氏一族であり、中国文化に親しんでいたこと
壬申の乱以来の天武天皇系皇統が断絶し、天智天皇系皇統が再興されたことを「新王朝」創業に擬え、天に報告する意図

文徳天皇による郊祀

桓武天皇の時代から約70年後の斉衡3年（856年）には、文徳天皇も同じく柏原で郊祀を行っています。しかし、この時には既に都は平安京に移っており、柏原は平安京からやや離れた場所にありました。そのため、なぜ柏原で再び郊祀が行われたのか、その理由ははっきりとはわかっていません。

謎多き郊祀

日本の歴史上、郊祀が行われた記録は、桓武天皇の時代に2回、文徳天皇の時代に1回の合計3回しかありません。なぜこれほどまでに少ないのか、その理由も謎に包まれています。桓武天皇の時代に始まった郊祀が、その後定着しなかった背景には、日本の神道との相違や、政治的な状況の変化など、様々な要因が考えられます。

郊祀は、古代日本の国家祭祀における中国文化の影響を示す貴重な事例であると同時に、多くの謎を秘めた歴史的出来事と言えるでしょう。

参考文献

村山修一 著「祭文」、日本歴史大辞典編集委員会 編『日本歴史大辞典5 サ - シ』河出書房新社、1979年11月。
森公章「郊祀」（『日本史大事典 1』平凡社、1992年、ISBN 978-4-582-13101-7）

関連項目

祭天
皇帝祭祀

外部リンク

郊祀(こうし)とは - コトバンク
* 郊祀とは - 世界宗教用語 Weblio辞書

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