安南

安南保護国について

安南（あんなん）は、フランス統治下にあったベトナムの北部および中部地域を指す歴史的な名称です。唐代に設立された安南都護府に由来しており、フランス側の呼称として広まったもので、ベトナム語では「中圻」（チュンキ）として知られています。フランス統治後、独立したベトナムにおいては、地域名が「ミエンチュン」（中部地方）に変わり、安南という呼び名はあまり使われなくなりました。

名称の背景

フランス植民地時代、安南はインドシナ連邦の一部として位置付けられ、阮朝の支配下にあったベトナム中部に対応する名前でした。当時のフランス植民地政府は、トンキンやコーチシナなどの呼称を避け、ベトナム全域を指す際に安南を用いることが多かったのです。このように、安南は国際的にも広く知られた名称となりました。

歴史的背景

安南の名称は、歴代のベトナム王朝が中国からの冊封を受ける際に用いられていた地名でもあります。特に阮朝は「越南」及びその後の「大南」という国号を持つ一方、中国や日本との関係においては安南と名乗っていました。

トンキン戦争とフランスの侵攻

1882年、フランス軍はアンリ・リビエール大佐の指揮の下、トンキンに再侵攻し、この戦争はトンキン戦争と呼ばれています。その結果、1883年には福江（フエ）の阮朝政府がフランスとの癸未条約を締結し、安南がフランスの保護国であることが正式に認められました。この条約により、安南は関税や土木を除き、阮朝による統治が続けられる一方、フランス官吏も首都フエに常駐するようになりました。

清仏戦争の勃発

フランスの直接的な介入は、当時の宗主国である清の介入を招き、清仏戦争（1884年 – 1885年）に発展しました。この戦争の結果、天津条約によって清はベトナムに対する宗主権を放棄しました。国内では勤皇運動が活発化し、反フランスの抵抗活動が展開されましたが、最終的にフランス軍に捕らえられた咸宜帝によって運動は下火になりました。

フランス領インドシナへの統合

その後、安南は1887年に海軍植民地省の管轄下に入れられ、インドシナ総督によって統治されることとなりました。これによって安南はインドシナ連邦の構成要素となり、阮朝の皇帝のもとでベトナム人官吏が国内行政を担当し、1916年までは科挙試験も行われていました。しかし、フランスからの影響を受けた教育機関が増え、ベトナム語とフランス語の混成教育を受けた公務員が次第に登用されるようになりました。

結論

安南はフランス植民地時代に重要な地域でありながら、その名称や歴史的背景はベトナムのアイデンティティと深く結びついています。ベルヌー文化やフランス植民地主義の影響を受けた安南は、現在のベトナムにも多くの影響を与えており、その歴史は今なお研究や調査の対象となっています。

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