李完用

李完用（イ・ワニョン）とは

李完用（り かんよう、イ・ワニョン、1856年7月17日 - 1926年2月12日）は、李氏朝鮮末期から大韓帝国にかけて活躍した政治家です。大韓帝国の内閣総理大臣や、大日本帝国の朝鮮総督府中枢院副議長などを務めました。その生涯は、激動の時代を背景に、複雑な評価を受けています。

生涯

京畿道で生まれた李完用は、1883年に科挙に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。1887年からはアメリカ合衆国で3年間勤務し、国際的な感覚を養います。帰国後は、国際派政治家として頭角を現しました。

1895年の閔妃暗殺事件（乙未事変）後、李完用は親露派、親米派勢力と連携し、大院君派の打倒を企てますが失敗。その後、ロシア公館に逃れた高宗を助け、金弘集政権を瓦解させることに成功。外部大臣（外務大臣）に就任しました。しかし、翌年にはロシア公使との対立により地方に転出させられます。

1901年に中央に戻った李完用は、当初は親米派として活動しますが、1904年の日露戦争を境に日本寄りの姿勢へと転換します。1905年には、第二次日韓協約の締結に賛成し、推進。このことから、反対派から「乙巳五賊」の一人とされました。

1907年、韓国統監伊藤博文の推薦で内閣総理大臣に就任。高宗がハーグ密使事件を起こした際には、日本側について退位を迫りました。このため、彼は「丁未七賊」の一人にも数えられています。李完用は、第三次日韓協約の成立にも深く関与しました。

1909年には、キリスト教徒の刺客に襲撃され重傷を負いましたが、奇跡的に一命を取り留めます。日韓併合問題が近づくと、李完用は一時休職を望みますが、後任が見つからず留任しました。

1910年8月、韓国併合の内容を伝えられた李完用は、その大部分を承諾。日韓併合条約を締結し、全権委員として調印しました。このことから、彼は「庚戌国賊」とも呼ばれるようになります。その後、日本の下で伯爵の爵位を得て、後に侯爵となりました。1926年には大勲位菊花大綬章を授与されています。

1926年、肺炎により死去。彼の死後、売国奴としての汚名を着せられ、墓が荒らされることもありました。1979年には子孫によって墓が撤去されました。

評価

韓国、北朝鮮においては、李完用は親日派、売国奴の代名詞として扱われています。彼は、乙巳五賊、丁未七賊、庚戌国賊の全てに名前が挙がる唯一の人物です。韓国政府からも親日反民族行為者に認定されています。

一方で、李完用が韓国の将来を考え、自主独立への道を模索していたとする見方もあります。独立協会の創設者の一人であり、日本語を学ぼうとしなかったというエピソードもあります。また、書道家としても評価が高く、著書も残しています。

彼への同情や共感も存在し、その葬儀は国葬ではないにもかかわらず、数キロに及ぶ葬列ができたと伝えられています。息子の李恒九によると、李完用は気前が良く、訪ねてきた人を手ぶらで帰すことはなかったそうです。

爵位

1910年 - 伯爵
1920年 - 侯爵

栄典

1915年 - 大礼記念章
1925年 - 従二位
1926年 - 正二位
1926年 - 大勲位菊花大綬章


李完用は、激動の時代を生きた複雑な人物です。彼の生涯は、歴史を多角的に捉える上で、重要な教訓を与えてくれます。

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