李康妃

李康妃（りこうひ）は、明朝の泰昌帝の側室であり、生没年は不詳です。彼女は、万暦帝の時代に皇太子であった朱常洛（後の泰昌帝）の邸に入り、側室である選侍となりました。当時、別の選侍であった李氏（後の李荘妃）と区別するために「西李」と呼ばれていました。

皇太子時代の朱常洛は西李を深く寵愛し、彼女は皇太子の寵愛を背景に、傲慢な態度を取っていたと伝えられています。また、西李は、母親を失った朱由検（後の崇禎帝）を養育し、万暦47年（1619年）には、皇長孫であった朱由校（後の天啓帝）の母親である王才人が亡くなった後、朱由校の養育も任されました。しかし、西李は皇太子の寵愛を笠に着て、朱由校や幼少から朱常洛に仕えていた宦官である王安を見下していたと言われています。

泰昌帝が即位すると、西李は詔書により皇貴妃に封じられることになりましたが、冊封の儀式の際に泰昌帝が急逝しました。泰昌帝の崩御後、朱由校は王安の手によって文華殿に移され、群臣の前で即位しました。この状況に、気持ちが塞ぎこんでいた西李は乾清宮に居座り、無礼な態度を取ったため、天啓帝の怒りを買い、他の者たちとともに別宮へ追放されることになりました。しかし、その後、西李は呼び戻され、天啓4年（1624年）には、泰昌帝の廟号である光宗にちなんで、光廟康妃に封じられました。崇禎帝の時代には、弟の李国安が一品都督同知という高い地位に任命されています。

崇禎17年（1644年）3月、李自成率いる反乱軍によって北京が陥落した際、崇禎帝は、懿安張皇后（天啓帝の皇后）と皇太妃李氏（西李）に自害を命じましたが、混乱の中でこの命令は伝わりませんでした。李自成軍が皇宮に進入すると、西李は実家に逃れて難を逃れました。その後、清朝が中国を支配するようになると、清朝政府から手当を受けて扶養されるという形で、その生涯を終えました。

西李には、以下の子供がいました。

朱由模：5歳で死去。崇禎帝の時代に懐恵王と追諡されました。
朱徽媞（楽安公主）
その他1〜3人の女子：夭折。崇禎帝の時代に公主に追封されました。具体的には、悼淑公主、悼寧公主、悼康公主、悼順公主、悼恭公主の5人のうちのいずれかとされています。

彼女の生涯は、明朝末期の動乱期における宮廷内の複雑な人間関係と権力闘争を色濃く反映しており、彼女自身もその波乱に翻弄された一人であったと言えるでしょう。

【参考文献】

『明熹宗実録』
『崇禎長編』
『酌中志』
『三垣筆記』
『甲申伝信録』

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