李斉賢

李斉賢（イ・ジェヒョン）

李斉賢（イ・ジェヒョン、1288年1月28日 - 1367年8月24日）は、高麗時代末期の政治家、儒学者、そして詩人として知られています。彼は、高麗社会において重要な役割を果たし、その多岐にわたる才能を発揮しました。

生涯

李斉賢は、検校政丞（けんこうせいしょう）李瑱（イ・ジン）の子として慶州で生まれました。幼少の頃から学問に励み、14歳という若さで科挙に合格、その才能を早くから示しました。22歳で芸文春秋館（げいぶんしゅんじゅうかん）に入り、本格的に官僚としてのキャリアをスタートさせます。また、彼は朝鮮における朱子学の祖とされる白頤正（ペク・イジョン）の門下生となり、儒学の深い知識を身につけました。

1320年、李斉賢の人生における重要な転換期が訪れます。当時、元の支配下にあった高麗では、前王である忠宣王（チュンソナン）が元で不当な讒言により捕らえられ、チベットへと流刑に処せられます。この事件を機に、親元派の高官たちが勢力を拡大し、1323年には高麗の元への併合を求める動き（立省問題）が起こりました。李斉賢はこの危機に対し、元の政堂に対し、高麗併合が元の長期的な利益にならないことを説き、この計画を中止させることに成功しました。また、彼は遠くチベットまで旅をし、流刑中の忠宣王を見舞いました。

1339年、忠粛王（チュンスクワン）の死後、忠恵王（チュンヘワン）が即位しますが、忠恵王は元の信頼が薄く、親元派による廃位の陰謀が企てられます。忠恵王が二度にわたり元軍に捕らえられると、李斉賢は元の宮廷へ出向き、王の弁護に尽力しました。その後、恭愍王（コンミンワン）が即位すると、李斉賢は権征東行省事（けんせいとうこうしょうじ）という元の官職に任じられ、1356年には金城侯（キムソンフ）となり、門下侍中（もんかじちゅう）として宰相の職務を担いました。1357年に引退し、著作活動に専念しますが、重要な事柄については度々王から諮問を受けました。1374年には、恭愍王廟に合祀され、その功績が称えられました。

学問と文化への貢献

李斉賢は、儒学者として多くの門人を育て、朱子学の普及に尽力しました。彼は、度重なる元への訪問を通じて、多くの文人たちと交流し、その見識を深めました。また、忠烈王（チュンヨルワン）から忠粛王までの3代にわたる実録や国史の編纂にも携わりましたが、これらの記録は現在では散逸しています。しかし、彼の随筆集である『櫟翁稗説（ヤクオンハイセツ）』や詩文集『益斎乱藁（エキサイランコウ）』は現存しており、彼の文学的な才能を知ることができます。

まとめ

李斉賢は、高麗末期の激動の時代において、政治家、儒学者、そして文人として、その才能を遺憾なく発揮しました。彼は、高麗の存続のために外交交渉を行い、朱子学の普及に尽力し、また多くの文学作品を後世に残しました。彼の功績は、高麗史、そして朝鮮の歴史において、重要な位置を占めています。

参考文献

『高麗史』巻34-巻39、巻41、巻110
『高麗史節要』巻24-巻28
『東国通鑑』巻42-巻46
『益斎先生年譜』
* 『牧隠文稿』巻16

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