李氏朝鮮の家族制度

李氏朝鮮の社会は、個人よりも家族を基本単位として構成されていました。この時代、家族制度は儒教の影響を強く受けており、家父長制が厳格に施行されていました。家長の権限は強化され、家族の全てのメンバーは家長に従わなければなりませんでした。特筆すべきは、家長や親に対する告訴は極めて重い懲罰が伴ったことで、告訴を行った者が逆に厳罰を受けることもありました。そのため、家庭内での秩序は厳格に保たれていました。家長は家庭内の祭祀を主宰し、家族の生活全般を管理していました。

また、家長は、外部においても重要な役割を果たしました。民間の契約は家長の署名がなければ成立せず、官庁でも家長が全ての取引先として扱われました。このように、家族制度は家長の権威を中心に構築され、社会全体がこの枠組みの中で形成されていたのです。

李氏朝鮮の家族制度には、宗族による相互扶助の側面もあり、大家族の枠組みが確立されていました。このことは、冊子や族譜の作成を通じて同族の結びつきを強化し、同族に対する意識を高めることに寄与しました。また、婚姻に関しても厳正な規則が設けられており、同姓婚は禁止されるなど、儒教の教えが強く反映されていました。

婚姻は、男子が15歳、女子が14歳以上であれば法的に認められていましたが、特別な場合には女子も12歳で婚姻が許可されることがありました。しかし、女性にとっては極めて厳しい制約がありました。男子は再婚が自由であったものの、女子は再婚が禁止され、再嫁した場合には社会的な地位を失うことになりました。これにより、女子は夫や家長の承認がなければ自由に行動することも難しく、交際や外出の際にも厳しい公開ルールの下で行動しなければなりませんでした。

また、李氏朝鮮は嫡子と庶子の間に厳格な差別が存在したことでも知られています。公認された一夫多妻制にもかかわらず、妾の子供は格差を持たされることが多く、太宗の時期に設けられた庶孽禁錮法がこの差別を助長しました。高い身分の人と低い身分の人との間で、服喪の期間を五つに分ける五服制度が適用されるなど、死者に対する扱いもその身分によって異なる厳しさがありました。

冠婚葬祭に関する礼制は、李氏朝鮮時代には朱子学の影響を受けて発展しました。高麗の時代には仏教的儀式が主流でしたが、朱子学の影響により家族内での祭祀がより厳格な儒教的規範に基づいて行われるようになりました。

このように、李氏朝鮮の家族制度は、儒教による倫理観念や規範が強く影響を及ぼし、社会全体に広く浸透した結果、様々な変遷を経ながら今日に至っています。

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