李滉

李滉（イ・ファン）

李滉（1501年 - 1570年）は、李氏朝鮮時代の儒学者であり、字を景浩、号を退渓と称しました。李珥と並び、朝鮮朱子学の双璧とされています。

生涯

慶尚道安東（現在の韓国慶尚北道安東市）に生まれ、幼少期から学問に励みました。11歳で『論語』を学び始め、20歳頃には儒学に没頭し、その博識ぶりは広く知られていました。33歳で科挙に合格し、官僚としての道を歩み始めますが、1545年の乙巳士禍により失脚します。その後、洛東江のほとりに隠棲し、「退渓」と号して学問に専念しました。その後、官吏に復帰し、丹陽郡守や豊基郡守を歴任し、豊基郡守時代には、朝鮮初の賜額書院である紹修書院を設立するなど、教育にも尽力しました。晩年は故郷に陶山書院を開き、後進の育成に力を注ぎました。

思想

李退渓の思想は、朱子学を基盤としており、陽明学を退けています。朱子学の「格物致知」や「理気二元論」に基づき、精緻な議論を展開しました。彼の思想は主理説に特色があり、「東方の小朱子」とも称されました。同時代の李珥とともに、朝鮮儒学を代表する人物とされています。彼の学説を継ぐ人々は嶺南学派と呼ばれ、後に李珥の系統を引く畿湖学派と対立しました。李退渓の学問は、徹底した内省を出発点とし、朱熹の学説を整理しました。奇大升との長年にわたる論争では、理気の互発説を主張し、倫理的な側面を重視しました。45歳頃には『朱子大全』を入手し、その内容に深く没頭しました。

影響

李退渓は、その思想や学問を通じて、朝鮮社会に大きな影響を与えました。彼の著作は、日本の朱子学者にも影響を与え、江戸時代には多くの著作が復刻されました。ソウル中心部の道路「退渓路」は彼に因んで名付けられており、韓国の1000ウォン紙幣の肖像画にもなっています。また、梅を愛した人物としても知られ、その遺言は「あの梅に水をやってくれ」だったと伝えられています。

著作

『朱子書節用』
『聖学十図』
『自省録』
『易学啓蒙伝疑』

日本語訳

『自省録』難波征男 校注、平凡社東洋文庫、2015年

参考文献

木村誠 ほか編 編『朝鮮人物事典』大和書房、1995年
* 金素天「韓国史のなかの100人」明石書店 2002年


李退渓は、その思想と実践を通じて、朝鮮儒学の発展に大きく貢献しました。彼の業績は、現代においても高く評価されています。

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