李珥

李珥の生涯と業績

李珥（1553年 - 1584年）は、李氏朝鮮時代の影響力ある儒学者であり、その号は栗谷（りっこく）です。彼は1536年に江陵で生まれ、若い頃から驚異的な才能を示しました。母である申師任堂の影響を受け、優れた教育を受けた彼は、わずか13歳で進士の初試に合格し世間を驚かせました。

彼の人生には多くの試練があり、16歳で母に死別し、精神的な虚無感から金剛山で禅を学ぶことになります。その後、知識を広げ、科挙では九度にわたり状元となるという偉業を成し遂げ、「九度壮元公」の名が付けられました。

李珥は、貢納制の改革や郷約・社蔵の実施に尽力し、政治においてもさまざまな役職を歴任しました。1568年には明国に使者として派遣され、その後は右副承旨や吏曹判書などを務めました。

思想の特徴

彼は朱子学者として名高く、特に李滉と並ぶ存在として知られています。彼の思想は、主に理気論において独自の展開を見せました。李滉の理気二元論に対立する形で、李珥は理と気が相互に包括し合う関係にあると主張しました。彼の理論では、理は無形無為、気は有形有為とされ、相互作用の本質を掘り下げました。

また、李珥は「四端七情」の概念を取り上げ、気が発し理がそれに従うという形式を提唱しました。このように、彼は伝統的な朱子学を進化させ、さまざまな学問との掛け合わせを試みました。

社会への影響

李珥の思想は、単なる学問にとどまらず、社会の政治、経済、教育、国防においても大きな影響を与えました。特に1583年に朝鮮王朝の14代国王宣祖に提出した「十万養兵」の提言は、国防を軽視する現状を憂慮したものでした。彼は、国内の問題を解決しなければ、外敵の侵略に耐えられないと警鐘を鳴らしましたが、その主張はあまり重視されませんでした。

また、16世紀前半は士林派と勲旧派の政治闘争が激化していました。李珥はこの党争を仲裁しようと尽力しましたが、栗谷の死後、党争はさらに激化し、朝鮮の政策にも影響を与えました。彼は、政治の混乱を背景に後の文禄・慶長の役を迎えることになってしまいました。

最後の時

1584年に李珥は亡くなりましたが、その業績は広く知られ、資料にも多くの著作が残されています。彼の思想は、近代まで影響を与え、教科書や文学にも登場します。韓国では5000ウォン紙幣にその肖像が描かれ、彼の存在は今もなお尊ばれています。

李珥の著名な著作には『聖学概要』や『栗谷全書』、さらに『箕子實記』があり、特に『箕子實記』では、古代の檀君に対する観点を巡り、多くの議論が展開されています。

彼の生涯は、朝鮮王朝の歴史における重要な部分であり、その考え方や提言は、今なお多くの人々にとって教育や社会政策においての指針となっています。

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