李賀

李賀の生涯と詩の世界

李賀（りが、791年 - 817年）は、唐代中期の中国を代表する詩人の一人で、幻想的な文学世界と独特の詩風で知られています。彼の本名は李長吉で、河南省福昌県昌谷（現在の洛陽市）で生まれました。李賀の父は中堅官僚で、その出自は唐の高祖李淵の血を引く誇り高いものでした。しかし、彼が生まれたころには家族は中産階級に没落しており、故郷を誇る一方で、詩人としての道を志しました。

李賀は早熟な文学者であり、14歳で数多くの楽府を作成し、その名声を高めました。17歳頃には、文壇の巨星である韓愈を訪れ、自らの詩を評価され庇護を得ました。810年に長安に向かい、進士を目指しましたが、科挙の受験を拒否されるという不運に見舞われます。理由は、父の諱と同音のため進士にはならない方が良いとされたもので、これは名目上のものでした。李賀はこの理不尽に失意し、昌谷へ戻りました。

その後、奉礼郎の官職に就くものの、名誉を重んじる彼には耐えられるものではなく、813年には辞職して帰郷しました。この職もまた、帝室の血縁者に与えられるものであり、李賀はその扱いに不満を感じていました。837年に急病に襲われ、母に看取られながら27歳でこの世を去りました。

李賀の詩の特徴

李賀の詩は、幻想的でありながら哀しみを内包したもので、まったく独特なものです。彼の作品はリアリズムを重んじる中国文学において、幻想を追求することによって際立っています。彼の名作には、南朝の有名な歌妓である蘇小小を題材にした詩があります。この詩では、蘇小小が亡霊となって愛する人を待ち続ける様子が描かれており、美しさと重苦しい雰囲気が同居しています。

李賀の詩には、亡霊や妖怪、超常現象がしばしば登場し、それが詩のテーマそのものとなることも多いです。彼は鬼人とも称され、その作品は死や絶望を繰り返し歌い上げ、ペシミズムが漂います。特に彼の絶望的な心情は、「長安に男児有り 二十にして心已に朽ちたり」（『陳商に贈る』）という詩句にも表れています。

また、李賀の作品は色彩豊かであり、彼の独特な表現法に注目が集まります。「瑠璃の鐘 琥珀濃し 小槽酒滴って真珠の紅」といった具合に、彼は色彩感覚を駆使し、その描写が鮮やかすぎるあまり、時として不健康ささえ感じさせることがあります。さらに、技術面においても独創的な比喩表現や新たな用語を用いることによって、鑑賞者の日常的な理解を阻む作品を生み出しています。

後世への影響

李賀の詩は、彼の生前からすでに高い評価を受けていました。彼を理解した文人・韓愈の庇護もあり、晩唐の詩人たちに影響を与えました。特に李商隠や皮日休といった詩人たちは彼の作品から多くを受け取り、後世でも彼の詩は民族主義者たちに愛されました。清代に入ると、彼の名はさらに高まり、近代においても多くの作家に影響を与えています。

近代日本では、泉鏡花や芥川龍之介などが彼の詩を愛読し、その影響は今日に至るまで続いています。彼の作品は、文学界に独特の色彩と幻想をもたらし、今なお多くの聴衆や読者を魅了しています。

結論

李賀は、たった27年の生涯でありながら、240余首の詩を残し、その中には彼の苦悩や幻想が昇華された作品が詰まっています。彼の詩風は今なお多くの詩人に影響を与え続け、文学界において重要な存在であり続けています。

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