村上家住宅

村上家住宅（むらかみけじゅうたく）は、富山県南砺市上梨集落に佇む、国の重要文化財に指定された歴史ある合掌造り家屋です。

建物概要と歴史

村上家住宅のある上梨集落は、五箇山地方の中でも長い歴史を持ち、中心的な集落の一つとして栄えてきました。県内に現存する木造建築としては最も古いとされる上梨白山宮もこの地にあります。

村上家住宅の正確な建築年代については諸説ありますが、一般的には江戸時代中期、およそ18世紀前半頃に建てられたものと考えられています。しかし、地元には戦国時代の元亀元年（1570年）に起きた石山合戦の頃に建築されたという古い伝承が残されており、この伝承には、家屋の建設を手伝ったとされる怪力男と石山本願寺陥落にまつわる物語が付随しています。この伝承そのものが史実である可能性は低いとされますが、建物の構造には、戦国時代の武家造りから書院造りへと様式が変化していく過渡期の建築様式を示すような、古風で伝統的な意匠が随所に見られることが、村上家住宅の大きな特徴となっています。

合掌造り民家が礎石の上に建てられる形式が確立するのは17世紀頃と推定されていますが、18世紀に入ると、氷見郡大窪村の大工たちが五箇山地方の民家建築に関わるようになり、合掌造り民家の更なる発展と大型化が進みました。郷土史研究者の佐伯安一氏は、村上家住宅の間取りが比較的シンプルでありながら、部材の寸法が大きく、一文字棚や長押といった要素を備えていることから、大窪大工が進出し始めた18世紀前半の建築であると推定しています。佐伯氏はまた、かつて猪谷村にあり、現在は城端町に移築された「合掌ゲストハウス かずら」（旧酒井家住宅）も同時期の建築である可能性を示唆しています。

村上家住宅は元来、山崎家の所有でしたが、幕末に山崎家が北海道へ移住した後、村上家が所有するようになったと伝えられています。村上家の屋号は「オモテ」といい、これは「母屋」や「本家」を意味することから、村上家が上梨集落において中心的な役割を担っていたことが伺えます。

本住宅は、岩瀬家住宅など他の五箇山の歴史的建造物と共に、1958年（昭和33年）5月14日に国の重要文化財に指定されました。1970年（昭和45年）に一度解体修理が行われたほか、経年劣化の補修と耐震性の向上を目的として、2021年（令和3年）から2022年（令和4年）にかけても保存修理工事が実施されています。

建築様式と特徴

村上家住宅には、五箇山の合掌造り民家として特有の機能や、他の建物には見られない歴史的な痕跡が見られます。

主の寝室には、書院造りの流れを汲むとされる「帳台構え」が設けられています。
かつて加賀藩によって百姓家での使用が禁じられた「長押（なげし）」を取り外した跡が確認できます。
内部の主要な居間である「中の出居」に面して、初期の書院造りに見られる床棚の一種である「一文字棚」が設けられています。
大家族において、次男以下の家族や使用人のための寝室として「中二階」が充てられていました。
この地域で火薬の原料となる塩硝を製造していた名残として、「塩硝製造まや」（作業場）が建物内に残されています。

また、住宅内には、かつての生活や生産活動で用いられた様々な民具が数多く保存・展示されており、五箇山の人々の暮らしぶりを学ぶことができます。

公開情報と周辺

村上家住宅は一般公開されており、五箇山を訪れる多くの人々がその歴史と建築美に触れることができます。

所在地: 〒939-1914 富山県南砺市上梨742
アクセス: 東海北陸自動車道五箇山インターチェンジが最寄りのインターチェンジです。公共交通機関では、新高岡駅や城端駅から世界遺産バスが運行しており、「上梨」バス停で下車すると徒歩圏内です。
公開時間: 午前9時から午後4時まで。
* 入場料: 高校生以上は300円（団体料金設定あり）、小・中学生は200円（団体料金設定あり）です。幼児および障害者は無料で入場できます。

村上家住宅の周辺には、同じ上梨集落内に上梨白山宮、こきりこ館、三笑楽酒造株式会社、円浄寺などがあり、いずれも徒歩数分で巡ることが可能です。

関連建築

五箇山地方には、村上家住宅以外にも重要な合掌造り民家が現存しています。特に、西赤尾の岩瀬家住宅、小瀬の羽馬家住宅、田向の羽馬家住宅は、村上家住宅と合わせて「四大合掌住宅」とも称され、五箇山の歴史的な景観と建築技術を今に伝えています。

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