浄土三部経

浄土三部経とは

浄土三部経は、大乗仏教の重要な経典である『仏説無量寿経』、『仏説観無量寿経』、『仏説阿弥陀経』の三つの経典をまとめた総称です。これらの経典は、阿弥陀仏とその本願、そしてその仏国土である極楽浄土について詳しく説いています。特に、法然を宗祖とする浄土宗や、親鸞を宗祖とする浄土真宗において、教義の根幹をなす根本経典として非常に重要な位置を占めています。

各経典の概要

仏説無量寿経（ぶっせつむりょうじゅきょう）：通称『大経』とも呼ばれ、阿弥陀仏の本願や、極楽浄土の荘厳な様子について説かれています。曹魏の康僧鎧によって翻訳されました。
仏説観無量寿経（ぶっせつかんむりょうじゅきょう）：通称『観経』と呼ばれ、阿弥陀仏と極楽浄土を心に思い描く観想の方法や、往生するための具体的な実践について説いています。劉宋の畺良耶舎によって翻訳されました。
仏説阿弥陀経（ぶっせつあみだきょう）：通称『小経』と呼ばれ、阿弥陀仏の功徳や、極楽浄土の素晴らしい様子について、より簡潔に説いています。姚秦の鳩摩羅什によって翻訳されました。

これらの経典は、大正新脩大蔵経において「宝積部」に収録されています。

歴史的背景

浄土三部経が、この三つの経典をまとめて指すようになったのは、法然が著した『選択本願念仏集』（『選択集』）において、「初めに正しく往生浄土を明かす教えは、すなわち三経一論である」と述べたことが始まりとされています。ここでいう「三経」が、上記の三つの経典を指し、「一論」とは、天親（世親）が著した『往生論』（『無量寿経優婆提舎願生偈』）のことです。法然は、この三経が阿弥陀仏の教えを説く上で最も重要な経典であると位置づけ、浄土三部経と名付けました。

宗派による重視の違い

浄土教の各宗派では、浄土三部経の中で、特に重視する経典が異なっています。

浄土宗（鎮西派）と西山浄土宗（西山派）：『仏説観無量寿経』を重視します。この経典に説かれる観想の方法が、浄土宗の教えにおいて重要視されています。
浄土真宗：『仏説無量寿経』を最も重視します。宗祖である親鸞は、主著『顕浄土真実教行証文類』（『教行信証』）において、『大無量寿経』を教えの中心として位置づけています。
時宗：『仏説阿弥陀経』を重視します。

これらの宗派は、いずれも念仏を重視する点で共通していますが、どの経典を最も重要と考えるかによって、教えの解釈や実践において違いが見られます。

浄土三部経の註釈

浄土三部経は、古くから多くの人々に研究され、その教えを解説する註釈書も数多く著されています。これらの註釈書を通じて、浄土三部経の教えは深く理解されてきました。中国や日本において、浄土思想に関する註釈は、この三経典を中心に展開されていると言っても過言ではありません。

現代語訳と参考文献

浄土三部経は、現代においても多くの人々に読まれており、現代語訳も数多く出版されています。これらの現代語訳を通じて、経典の内容をより身近に理解することができます。また、浄土三部経に関する研究も盛んに行われており、参考文献も豊富です。

参考文献

浄土真宗教学編集所 浄土真宗聖典編纂委員会 編纂『浄土三部経』 現代語版、本願寺出版社〈浄土真宗聖典〉、1996年。
中村 元、早島鏡正・紀野一義 訳注『浄土三部経　上』岩波書店〈岩波文庫 青306-1〉、1990年。
中村 元、早島鏡正・紀野一義 訳注『浄土三部経　下』岩波書店〈岩波文庫 青306-2〉、1990年。

別訳版

山口益・桜部建・森三樹三郎訳 『浄土三部経 大乗仏典6』 中公文庫、2002年
大角修訳・解説 『浄土三部経　全文現代語訳』 角川ソフィア文庫、2018年
正木晃訳著 『現代日本語訳　浄土三部経』 春秋社、2022年

関連項目

阿弥陀三尊
南無阿弥陀仏
念仏
往生
* 宝積部 (大正蔵)

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